同棲生活 8日目

台風で自宅待機

 激しい氷の息吹が敵を次々に駆逐する。ブリザードドラゴンの召喚後に放たれた『ダイヤモンドダストブレス』でデマイズ達は一掃された。



「な、なにこのドラゴンの攻撃! 一瞬で終わっちゃった……」

「最後はリアの無双だったな」



 仲間の仇も取れたところで『拠点守護』を再発動。これでまたギルド拠点と専用ダンジョンは守られた。そして、まだ時間もあったので少しダンジョンへ。



「この世界ゲームって、思ったより色々出来るんだね」

「全員が魔法剣士みたいなものだからな」


「ヒーラーとかいないんだ?」

「それはクルセイダーとかパラディン系の役目だな」


「へぇ~、面白い」



 そうして、ゲームの事を話しつつも俺はリアと共に専用ダンジョンへ。ソリチュードダンジョン内部にいるエンシェントゴーレムナイトを倒していく――。



 ◆



 広々とした神殿を二人で回り終えた。

 その時、リアがリアルに叫ぶ。


「……あっ! もう深夜の一時だよ、大二郎」

「狩りしてたら、こんな時間に……やっべ。久しぶりだとついハマっちまうんだよな。もうこのまま寝ようか」


「う、うん」



 ゲームしすぎて疲れていたんだろうな。俺は、なんの違和感もなくリアをベッドに招き入れ添い寝させていた。


「……あっ」

「大二郎、どうしたの?」

「いや、なんでも――ない」



 リアは、気づいていないのか。

 気づかないフリをしているのか。

 分からないけど、でも……もう眠いし、まぶたが重くなって、深い眠りに落ちていく……。




 ――朝。

 目覚めると、強い風の音に起こされた。




「…………ん、なんだか外が荒れているな」

「おはよう、大二郎」

「ああ……リア。そういえば、一緒に寝てたっけ――な!?」



 目の前には、スカートを穿いていないブラウス姿のリアがいた。着替えている最中だったか……?



「驚かせてごめんね。今ね、スマホ見ていたら『台風』来てるって」

「それで外がごうごうと五月蠅うるさいのか」



 そういえば、そんな予報も出ていた。すっかり忘れていたな。


 外は、雨がバシャバシャと轟音を。雷もゴロゴロとうねっている。昨日まであんな晴れていたのに、こんな悪天候になるとはな。夏は、意外と季節が変わりやすい。



「今、学校がどうなるかラインで見てるんだけど、自宅待機になるって」

「マジか。でもそれは助かるかもな。昨晩、ゲームしすぎて寝不足だし」

「あはは。そうだね、わたしもどちらかといえば休みたい」


 俺もスマホをチェックすると、あずさや会長からもメッセージが来ていた。



『今日は自宅待機だってさ~』(あずさ)

『学校、台風で臨時休校になりました』(会長)



 こうなっては外出不可能。

 人間、自然には勝てないのだ。

 家で大人しくしているが吉だ。


「リア、まずは朝食にするか」

「うん。もう作ってあるよ~」



 ダイニングキッチンへ向かうと、テーブルには『ホットサンド』が置いてあった。こんなキレイにこんがり焼けて……美味そうだ。

 おぉ、コーヒーもあるじゃないか。外はともかく、家は最高の朝だな。



「リア、いつもありがとな」

「ううん、大二郎に食べて欲しいからいいの。愛情たっぷりめてあるからね」


 椅子に座る。

 う~ん、食欲がそそられる良い匂い。それに、このギッシリの黄色いタマゴ。トロトロで美味そうだ。



「いただきますっ」

「わたしも~、いただきまーす」



 二人してホットサンドを頬張る。



 うめぇ~~~~~~ッ!!



 なんだこのトロトロだけどサクサクな食感。タマゴがギッシリだから、味付けも濃厚。まるで俺の舌を理解しているかのような、そんな味わいだった。


 次にブラックコーヒー。



「……リアのれるコーヒーは絶妙で美味いな。 深いコクで俺にとってはこの苦味が丁度良い。いったい、何時間焙煎ばいせんしたんだかな」


「約ニ十分くらいだよ~。コーヒーメーカーは使ってるけど、全部自動。ていうか、そんな褒めないで……大二郎にキスしたくなっちゃうっ♡」



 リアは照れながらも、キスを我慢していた。それにしても、コーヒーはともかく、ホットサンドの出来は完璧。お店に出しても良いレベルだぞ、これは。


 素晴らしい朝食を楽しんでいると、スマホが鳴った。



「ん?」


『大二郎くん、おすすめのゲームない?』


 あずさからだ。

 あと、会長からも。


『神白くん、無趣味で暇なのでラインで話しませんか?』



 二人とも自宅待機で暇かよ。

 でも、そうだな、二人も『Excaliburエクスカリバー Onlineオンライン』に引きずり込もうか。


 それとも――。

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