ゲームセンターと水着売り場

 ゲームセンターに寄り、クレーンゲームを回る。なかなかの規模で何台も設置されていた。1プレイ100円なのは当たり前として、このお店は交通系電子マネーPOICAポイカが使用できるようだった。この前、ボートレースで勝った金をフルチャージしておいたので、今回はそれを使おう。


「お菓子や人形、フィギュアが取れるようだな」

「こんなにあるんだ。じゃあ、あの人形のヤツがいい」


 あのヘルメットを被った猫のキャラクターは『ヨシッ!? 猫ちゃん』か。確かに、今、SNSとかネット界隈では話題のキャラだ。俺もちょっと欲しいと思った。


「分かったよ、POICAポイカでタッチしてっと……。これでプレイできる。操作方法は分かるよな」

「うん、さすがに操作方法は分かるよ~。この矢印を押すんだよね」


 リアは、さっそく『ヨシッ!? 猫ちゃん』を狙う。上手に『←』から『↑』と矢印を操作していき、アームが自動で人形の上に落ちていく。それから、ガシッとアームが人形を掴むと見事に上昇。


「マジか。これはゲット確定だな」

「ほんとー!?」


 アームはそのまま人形を運び、取り出し口へ景品を落とした。まさかの一発ゲット。……この前のボートレースといい、リアは強運の持ち主らしいな。


「おめでとう、リア。一発とかすげぇな」

「えへへ♡ これ可愛いね、部屋に飾ろうっと」


 リアの笑顔の方が可愛いけどな。でもまあ、あの『ヨシッ!? 猫ちゃん』人形はちょっと羨ましい。俺も何か取るか!


「リアには負けてられないな」

「大二郎も頑張ってよ!」


 俺はお菓子やフィギュアに挑戦。しかし、どれも取れず惨敗。1000円、2000円、3000円と浪費していき、POICAポイカの残高をどんどん減らしていった。


「と、取れねえ……収穫ゼロだよ。くそう、最初にリアがやったヤツ以外、アームがクソ設定なんじゃないか、これ」

「かもね。それか、わたしは運が良かったのかな」

「悔しいなぁ……。仕方ない、これを最後にするか」


 泣きの一回で小さなキーホルダーが取れるヤツにした。俺はPOICAポイカを使い、プレイ開始。慎重にアームを進めていくと――景品に上手くアームが挟まり、ゲットした。


「きたぁッ!」


 コロンと取り出し口に落ちてくる小さな物体。今日やっとの収穫だ。小物でも取れれば嬉しいモノだ。クレーンゲームとは取る事に意味があるのだな。


「やったね、大二郎♪ あ、しかもそれ猫耳メイドのエイルさんのキーホルダーだよね。いいなあ~」

「そういえば、リアも好きなんだっけ。いいよ、あげる」

「いいの~?」

「お、おう」


 キーホルダーを手渡すと、リアは太陽のように顔を輝かせて喜んだ。今日一番の笑顔で喜び、直ぐにかばんに取り付けていた。……まさか、猫耳メイドのエイルさんがそんなに好きだったとは。


「Большое спасибо」(本当にありがとう)


 うっかりだったのかロシア語でそんな事を言った。ああ、これは流石さすがの俺でも分かる。“ありがとう”って言ったんだな。


 満足した所でゲーセンを後にして、ショッピングモールを出ようと通路を歩いていく。その通路に沿ってお店があるわけだが、途中でリアが足を止めた。


「どうした?」

「水着売ってる」


「あー、そういえば、海水浴場へ行った時に胸のサイズ合わなかったもんな。丁度いいじゃん。ここで買うか? 俺、ここで待ってるし」


「……う、うん。大二郎に決めて欲しいな」



 ――と、リアは頬を赤らめ、少し震えながら言った。



「え……マ、マジかよ。俺が決めるの!? でも、リアの胸のサイズとか分からんよ。決めれてもがらくらいだぞ」


「ん~…、大二郎ならいいか。Fでアンダーは――」

「そ、そこまで言わなくていいって!」


 てか、リアってFもあるのかよ。

 などと驚いていると、半ば強引に腕を引っ張られ……水着コーナーへ連行された。


 こ、これを選べって?

 難易度高すぎるだろう。

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