ボートレース

 お茶とホットスナックを購入。

 からあげとフランクフルト、焼き鳥などサッと食べられるものにした。それを手に持ち、フリーの観戦席へ足を運ぶ。


「わぁ、なんか物凄いエンジン音が聞こえるね」


 リアの言う通り、ボートの音が聞こえていた。ようやく観戦席に辿り着くと、ちょうどボートが出走していた。


「始まっているな。よし、ここ日陰だし見ながら食べるか」

「うん。食べさせてあげる♡」

「え……でも」

「遠慮しない。はい、焼き鳥」


 人の目がモロにあるのだが……いや、そうでもないか。全員がレースに集中し、勝敗を見届けていた。全然平気だったな。俺はこの隙にパクッと焼き鳥を戴いた。……うまい。


「じゃあ、俺はフランクフルトをリアに食べさせてあげるよ」

「え、大二郎のフランクフルトを?」


 顔を赤くし、ギョッとするリア。

 あの、何故驚く。それとその言い方はちょっと語弊があるような。いや、確かに俺が買ったし、好きだけども……!


「ほら、食え」


 銀髪をかき上げるリアは、ゆっくりと俺のフランクフルトに口をつけて――って、なんかおかしいぞ! なんでそんなエロいんだよ。


「…………はむっ。おいふい」


 な~ぜか涙目の上目遣いで見てくるし!

 ……くっ、リアめ、絶対にわざとだろ!


「ふ、普通に食べなさい」


「普通に食べてるよ。何を妄想していたのかな~? ねえ、大二郎。今考えていた事、教えてよ」


「何でもないっ。それより、レース凄いな。白熱してるし」

「誤魔化したか。うん、そうだね、よく分からないけど、凄い熱気だね。あ、ゴールインかな」


 昼食を食べ終わると丁度、レースが終わった。まだあと何レースが残っているし、少しだけ観戦・・してみるか。


 無論むろん、未成年は船券を購入できない。ニ十歳以上じゃないとダメらしい。ので、ここで爺ちゃん・・・・登場……というか、毎日のように通っているらしい。


「爺ちゃん、今日もいるな」

「へぇ、あれが大二郎のお爺ちゃんなんだ」

「そそ」


 遠くでレースを楽しむ若々しい服装の爺ちゃん『神白かみしろ 一郎いちろう』がいた。今日も爺ちゃん個人・・・・・・が船券を購入して楽しんでいる。俺たちは、レースを予想するだけ・・・・・・。ただ単に予想するだけなら、合法だ。船券は買わないし、観戦のみ・・・・だ。


 ――そう、これは言うなればシミュレーションようなもの。昔からよく爺ちゃんによく連れてこられては予想をしていた。そのせいか、俺の予想は当たりやすく参考にされた。


 今回は、偶然俺たちの近くを通りかかった爺ちゃんが、情報をこれまた偶然盗み聞きしてしまって購入するというもの。勿論もちろん、俺から爺ちゃんに“やってくれ”とはお願いしていない。爺ちゃんは、ボートレース通いの生粋のギャンブラーだから、どうしても勝ちたいのだろうな。だから、俺……今回はリアもいるけど『予想』を参考にしたいのだろう。全ては偶然・・・・・だ、仕方あるまい。


 さっき調達したマークシートと競艇選手データが掲載されている用紙、そして、独特なエンピツを使い、次のレースを予想する・・・・


「大二郎、そのマークシートに記入するの?」

「買いはしないけど書くだけね。まあ、賭け方は様々あるんだけどね、単勝、複勝、二連単、二連複、三連単、三連複、拡連複」

「そんなにあるんだ」


「三連単が一番当たりもデカイけど、的中が難しい。まずは単勝か複勝で遊ぶのがいいだろうな」

「うんうん。なんだかそう聞くと面白そうね。後は選手の情報も重要なのね」


 スマホでリアは、ボートレースの情報取集をしていたようだ。割と理解が追い付いてきているらしい。これなら、細かい説明は不要かもな。



 ――さてと、どうしようかなあ。

 これは、あくまで予想・・だけどね!

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