好きすぎて

 キスを強請ねだられ、しかもいつの間にか恋人繋ぎまでされるこの人生最高の瞬間。ここまでされてはもう俺は後に引けなかった。


「……」


 俺はそっとリアに近づいていく。

 いつも奪われてばかりだけど、今回は俺がリアの唇を奪う番だ。



 ――あと数センチ。


 ――あと数ミリ。



「――――」



 もうわずかもなかった距離で、リアは目から涙を零す。突然泣き出すから、俺はビックリした。


「ど、どうした。嫌だったか……?」

「ううん、違うよ。大二郎が好きすぎて……嬉しすぎちゃって気持ちが先に出ちゃった。……あれ、おかしいな。涙が止まらないや」


 ボロボロ泣き出すから、俺は困惑した。


「本当に、俺が嫌だったとか気持ち悪かったとかじゃないんだな」

「ないない。だったら一緒に住まないし」

「それもそうか」

「ごめん。雰囲気ぶち壊しだね、また今度に」

「分かった。またいつかな」


 俺がそう約束すると、リアは天使のような笑顔を向けてくれた。それから照れ臭そうに俺の頬にキスをくれた――。



 ◆



 帰宅部を終え、ロシアっ子と肩を並べて下校。他の男子からジロジロ見られ、恨めしいぞとにらまれる俺。もう周囲の目なんぞ気にしない。そんな事より、さっさと舞阪駅へ向かわねば。


 学校から徒歩十五分の距離をひたすら歩く。


「ねえねえ、大二郎。晩御飯はどうするの?」

「ん~、簡単にカップ麺で済ませるか」


「カップ麺! 日本には美味しいのカップ麺が沢山あるよね。あれ、あれなんだっけ……辛いヤツ」


蒙古もうこタンメンか?」

「そうそれ。それにしよう」


 カップ麺なら助かるな。

 てっきり『うなぎ料理店』とか外食を希望されると思ったが、さすがにまだ引っ越してきたばかり。財政難とは言わないが、それなりに良いアパートを選択した為、主に家賃のせいで逼迫ひっぱくしていた。


 贅沢は敵だ。

 もやし生活だけは回避したい。


 そんなわけで晩飯は『蒙古タンメン』に決定。弁天島駅の前にあるファミマートでバーコード決済『PoyPoy』を使用して購入した。丁度、20%還元キャンペーンがやっていて助かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る