なんか、挑戦するらしい
特産品を作ろう!①
「知力を上げるアイテムとか、作れるの?」
「まあ、『木のクワ』と難度的には同じくらいだ。装備系の入門としてはもってこいだな。とはいっても俺は作ったことないんだけど」
俺が作ったことがあるのはほんとに初歩の初歩に当たる水石くらいだ。
すでにある道具に魔力を付与する付与魔術で装備を作るのはやったことあるが、錬成鍋を使った装備の作成はやったことがないのだ。
錬成鍋で作る装備は付与魔術で作るよりずっと効果が大きい。
「正直、装備は量産するような物でもないし、後回しでもいいかと思ってたんだけど、知力が上がって勉強の効率が上がるなら作ってもいいかもしれない」
「量産できないんですか?」
「よくわからんけど、同じ装備を複数個装備しても効果が一つ分しか得られないんだ。本の中にはそういう物だとしか書いてなくてな」
「……作ることはできるんですね」
「? あぁ。作るだけなら問題ないぞ」
ミーリアは質問した後、何かを考えだし、そのまま動かなくなってしまう。
「はいはい。新装備のことは後にしておいて、みんな、朝食の準備を手伝って頂戴」
「はーい」
アリアの発言で、その話はお開きとなり、俺以外のみんなで朝食の準備を始めた。
***
「それ、どうやって作るんですか? 装備」
「作り方は他のものと大して変わらないぞ? 素材となる装飾品と知力を上げるアイテムをいくつか使うんだ」
「素材となる装飾品を使うということは、形は自由に決められるということですか?」
「あ、あぁ。そうだな……」
朝食が終わると、俺はミーリアに質問攻めにあっていた。
ミーリアがこんなに積極的なことはあまりなかったので、正直タジタジだ。
「どうしたのよ? ミーリア。あなたらしくないわよ」
「アリア。これはいい商品になると思うんです」
「商品?」
ミーリアはキラキラした目を今度はアリアに向ける。
「私が王都にいた頃、錬金術師の作ったブレスレットや不思議な力を持ったネックレスはかなりの値段で取引されていました。この村の特産品として売り出せば、安定的な利益につながるはずです」
「で、でも、錬金術で作れるものならこの村の特産ってわけじゃないでしょ?」
「そこです。そこで、錬金術で作れるものというのではなく、村の近くの魔の森で取れたもので作った不思議な力を秘めたネックレスとすれば、この村の特産品として十分だと思いませんか? 意匠はこちらで決められるなら、ツルを編んで作ったいかにも自然の産物です。という形にして……」
ミーリアはアリアに向かって熱く語りかける。
いつも礼儀正しい彼女があんなに熱くなるのは初めて見た。
「なぁ、キーリ。ミーリアってあんな人だっけ?」
「レインはここに来て日が浅いからね。耕作物を売るときも目をキラキラさせてたわ。どうも、商売が好きみたい。装飾品とか服とかも好きみたいだからどっちも合わさった今回の件はかなりテンションが高いんじゃないかしら」
「へー」
意外な一面だ。
「さぁ。そうときまれば試作品を作りましょう。リノが一番手先が器用でしたね。装飾品作りを手伝ってください。まずはブレスレットから」
「お、俺か?」
「その前に森に行っていい感じの蔓をとってくるのが先ですかね。行きましょう!」
俺たちはミーリアに背中を押されるように魔の森に出発した。
***
「いい物ができませんねー」
ミーリアが装飾品作りに力を入れ出してから三日がたった。
ミーリアが納得がいくブレスレットができていないので装備品の作成にはまだ入れていない。
「ミーリア。そろそろ試しに一つ作っておくべきじゃないか?」
「ダメです。最初の一つは重要なんです。ここで妥協してしまえば、今後作るものも納得がいかないものになるに違いありません」
「そ、そうか」
俺はすごい剣幕のミーリアにうなずくことしかできなかった。
俺の中のミーリア像が音を立てて崩れて行く。
まあ、好意的に見ればそれくらい気を許してくれたということなんだろうが、それにしても変わりすぎだと思う。
「そうだ。あの花を使えば……。レイン。もう一回探索に行きませんか?森の浅い部分だけでいいので」
「いや、明日でいいだろ」
「何言ってるんですか。明日になったら花が無くなってるかもしれないじゃないですか! さあ、行きましょう!」
「……わかったよ。俺がついていくから。アリアたちはその間に夕食の準備をしておいてくれ」
「ごめんね。レイン。行ってらっしゃい」
俺は深い溜息を吐きながらミーリアの後を追った。
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