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「話が逸れちゃったね。つまり、証明できないけど、確かに存在するものなんていくらでもあるって事を言いたかったんだ。宇宙はその最たる例だからね。」
言いたいことはわかる。でも、だからと言って幽霊が居る絶対的な理由にはならない。
「確かに証明出来ないのに、存在するものがあると言うのはわかりました。でも、それと私の後ろに居るものと、どんな関係があるんですか?」
「守護霊だよ。」
私の後方を指さしながら、ニヤッと不敵な笑みを浮かべている。
「もしかして…。私の大好きだった、おばあちゃんが守ってくれてるんですか!?」
私は12歳の時に、心筋梗塞で急にポックリと逝ってしまったおばあちゃんを思い出した。
誰よりも私の事を可愛がってくれてたのに、あまりにも急だったので、最後にお別れも言えなかったのをずっと悔やんでいた。
嘘でもいい。
もし、おばあちゃんが私を心配して守ってくれてるなら、ちゃんとお礼を言いたい。
「いや、おばあちゃんは成仏してるよ。」
違った。
「じゃあ、私の守護霊は誰なんですか?」
澪は少し頬を膨らませながら尋ねる。
「澪ちゃんのは守護霊じゃなくて、守護神なんだけどね。」
神と言っていいのか、僕にもわからないけど。と、続けて聞こえほないど小さな声で呟いた。
「守護霊は聞いた事ありますけど、守護神ってなんですか…?」
なんだか、凄そうな響きだ。
「全ての人間には、もれなく守護する霊が憑いてるって話は、聞いたことあるよね?守護霊と言っても、様々な種類があるんだよ。ご先祖様が守護霊ってパターンがほとんどだけど、中には飼っていた動物が動物霊になるなんてパターンもある。」
私が飼ってる猫のミーちゃんも、死んだら私を守ってくれるのかな。
「その中でも、圧倒的な力を持つのが守護神。つまり、何らかの神様に護られてる存在だね。僕も実際に見るのは、澪ちゃんが初めてだから驚いたよ。」
そう言われても、私には全く実感も無いし特別な力があるわけでもない。幽霊とかも全く見えないし…。
「あのー。そんなに凄い守護れ…神が付いてるとは思えないんですけど…。むしろ結構運が悪い方だと思ってたり…。」
実際、つい最近もトラックに轢かれそうになったり、工事現場の下を歩いてたら上からスパナが落ちてきたりと、一歩間違えたら死んでいた。
そんな事は、割と日常茶飯事だったりもする。
「普通の人間だったら、もう死んでるんだよ。」
九十九は天井を見上げながら、話を続ける。
「澪ちゃんを護ってる守護神が強すぎて、死から逃れ続けてるって言った方がいいかな。」
お前はもう死んでいる。そんな某漫画の名言が頭をよぎる。思考と理解が追いつかない。
「霊感が無いから気付かないだけで、澪ちゃんはあらゆる霊を呼び寄せちゃう体質なんだよ。もちろん、悪霊と呼ばれる類の霊もね。いやぁー!モテモテだねー!羨ましいなぁー!」
九十九は満面の笑みでグッ!と親指を立てた。
「それで?仮に私がそんな体質だとして、それが私の命とどんな関係あるんですか?」
イラッとして、少し言葉がキツくなる。
「弱い低級霊なら、全然問題ないんだよ。少し体調を崩すくらいかな。それに、人を死に追いやるレベルの強力な悪霊なんて、なかなか遭遇しないからね。」
そう言って窓の方を見る。澪もつられて窓を見ると、空は薄暗く、歌舞伎町のネオンが眩しい。
「だけど、澪ちゃんの場合はそんな凶悪な悪霊も、見境無く引き寄せまくってるんだよ。ありとあらゆる手を使って、命を奪おうとしてくる。それを守護神が、徹底して護ってくれてるから今も生きてられるんだよ。」
九十九は、窓から澪の方に顔を戻す。
「九死に一生を得る様な体験を、何度も何度もしてるんじゃないかな?」
確かに、思い当たる節はいくらでもある。お母さんからも、私が小さい頃に、何度も私が病気や怪我で死にかけたという話は聞いていた。
「怪我とかは、特に多いですね。いくつか、傷跡が残っちゃってるのもあるんですよ。」
「その傷跡は、身体の左側にあるんじゃないかな?」
思わず、身構えてしまった。
九十九さんの言う通り、私の左肩と背中の左側には、斜めに大きな傷跡がある。
「左側の傷は、霊によるものだと言われてるんだよ。だから澪ちゃんもそうかなと思ってね。」
「ちょっと見せてねー。」と言うなり、九十九は前のめりになって澪の腕を掴むと、手の平を上に向けて指さした。
「これ、生命線だけど完全に途切れてるよね。」
確かにそれは、私も昔から気になっていた。
友達と手相の話になると、よくいじられたものだ。私の生命線は3センチ程度しかない。そこでプッツリと完全に途切れている。
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