第26話

 集中治療室は、容態の急変した患者の対応に追われていた。


「血圧下がっているぞ、輸血を急げ」

「心拍数低下、電気ショック用意」

「くっ、頑張れ、頑張れ」

 慌しく動き回っていた看護婦が、ふと足を止めた。


「・・・先生」

 何事かと思った医師も、顔を上げたまま固まる。



 彼らの視線の先、

無菌室の向こう側に、アオイが立っていた。



 全身を、純白に輝くウェディングドレスに包まれた。



 呆気に取られている医師達を見て、彼女はニコッと微笑んだ。

 その安らかな笑顔に、皆が吸い込まれそうになる。


「先生、患者が!!」

「何っ!?」

 いつの間にか、直人の脈拍・血圧が共に安定している。

 彼の口元は、微かに微笑んでいた。



「ナオ兄さん」

 アオイは、静かに言った。




「・・・あなたを、愛しています」

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