第5話 魔王を倒せ!
――――そして翌日の夜!
「タケオく~ん? そろそろ起きてくれんかのぉ」
また神様の声だ。はいはい、今ので理解した。俺は魔王を倒すまで、同じ夢を見続けるわけだ。
「はい、起きました」
「ほんで、ほんで? 何か良い能力のアイデアは浮かんだかの?」
「いや全然」
「ちょっとちょっとぉ、そんなんじゃ困るんじゃよ~」
夢オチで全部無かったことにしたかったんだけど、そうはいかなかった。
はぁ、困った困った。魔王に接近さえできれば……。
「テレポートとか……どうっすか?」
「テレポート?」
「瞬間移動です。そんなに長い距離じゃなくてもいいですから」
「ほんなら100m以内ぐらいでどうかの? そんぐらいなら1秒間隔で連続使用できるってことで」
「はい、それでお願いします」
「ほいほい。がんばってのぉ~」
――――それから三ヶ月後!
「ギブアーーーーップ!!!!」
「おお、帰ってきよったな。どうじゃった?」
「……かなり惜しいとこまで行けた気がします」
「そろそろクリアできそうかの?」
「まだ何とも言えないっすけど……」
「今度はどこで詰まったんじゃ? 魔の四天王?」
「そいつは倒せました。瞬間移動して不意打ちすれば一撃っす」
「ほほー、先手必勝というヤツじゃな」
「意外な抜け道でした……ってゆーか弱点知識、全然使えないじゃないっすか」
「ほなもん、ワシに言われても困るもん。あれは魔神サイドさんの情報じゃから」
神様が書いた情報じゃないのかよ……ってことは、他の連中にも魔神が把握していない意外な弱点がある?
「ハイパーゴーレムは足が遅いから瞬間移動で逃げまくって、やっぱり魔王が問題な感じです……。あいつには神様のチートが効かないみたいで」
「なんじゃと?」
「テレポートが発動しなかったんすよ。魔法も効かねーし。つーか、銃で撃たれるのマジで痛えし!」
「レベルアップも無意味な感じか?」
「それは……まだわからないっすけど」
そこで俺は閃いた。
「あっ、そうだ! レベルアップの速度というか敵を倒して強くなる上昇幅を大きくしてもらうことってできます?」
「ふーむ? できないこともないと思うが、あれじゃぞ? 敵がすぐザコになって、次々と強敵と戦わんといかんようになるぞ?」
「もうザコ戦は十分なんで。さっさと限界まで強くなってみたいんすよ。レベルアップだけで、どこまで戦えるかの検証っす」
「がんばるのぉ……。タケオくん、ワシャ嬉しいぞい! ワシも負けてられんの!」
いや神様は自分の世界のことなんだから、もっと最初からやる気出せよ……。
――――そして一ヶ月後!
「ギブアーーーーップ!!」
「今度はどうじゃった?」
「また魔王まで行けました!」
「ほほーん? 魔の四天王は?」
「ある程度のレベルがあれば、先手を取って勝てます」
「ハイパーゴーレムは?」
「魔法使いチームに弱点の無機生命体特効魔法を連続で唱えてもらって勝ちました。魔王にも……もう一押し何かがあれば、いけそうな気がします」
「具体的に言ってもらえんかのぅ」
「レベルアップは無効にはならないみたいですけど、弱体化してるっぽいっす。銃弾は二発までなら耐えられるって感じで。三発目は絶対に無理っす」
「しかしのぉ……どんな能力でも魔王には効かないんじゃぁしょうがないのぉ……」
「そうっすね」
俺も神様も黙り込んでしまった。なーんかイイ考えが浮かばねーかなぁ……。
「めっちゃ強い防具を作ってもらうとか、どうっすか?」
「作ってもええんじゃが、神様パワーが無効化されるなら当てにはできんじゃろな。魔法も無効なら魔法の武器や防具も使えんのじゃし」
う~ん、そうだよなぁ……。
また考えていると、神様が俺に言う。
「おそらくじゃけどな、魔王は魔神パワーを借りとらんと思うんじゃよ。まだ協定は生きとる。最後は普通の人間同士、お前さん自身の力で銃持ちのオッサンを相手にせんといかんわけじゃ」
「最後の最後でチート無しのガチンコってワケっすか」
「そうじゃ。人間としてのパワーが問われよう。そこでワシに一つイイ考えがあるんじゃが」
「はい」
「お前さんの両足に神の力を授けようと思う。これでお前さんの足はどんな強敵をも一撃で悶絶させる神の足になる」
「足……なんで足?」
「格闘技じゃよ。あえて接近戦を繰り返すことで、格闘センスを身につけるんじゃ」
「それで銃を避けろって? 無理だぁ!」
「いや、いける! 能力が無効になっても、お前さん自身が積み上げた強さだけは決してゼロにはならんのじゃ!」
ホントにやれるか……? 三発撃たれるまでに魔王に接近して、一撃で倒せと?
相手は生身の人間だし、レベルアップも完全に無効になるわけじゃないから、できないことはないんだろうけどさぁ……。
「キック、キック、キックの鬼になるんじゃ! ぶったるんだ魔王の精神に天誅を下したらんかい!」
「お、おう……」
「ほんじゃ、がんばっての!」
しょうがない……やるだけやってみるか!
あのクソ魔王にこの手で――いや足で一撃食らわせてやれるなら悪くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます