声劇 < 芸 能 界 > 第2稿

登場人物  

  筒井俊樹・・・・若手男優・かおりの恋人 

  林 哲也・・・・若手期待の男優 

  浅利かおり・・・若手期待の女優

  山本伸夫・・・・かおりの芸能事務所の社長

  梶 由美・・・・かおりのマネージャー・山本の愛人                              

  杉下(山本事務所の社員)

  ドラマ監督

   P(プロデューサー)

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 ○1 芸能事務所

山 本「今日、最終日だったな」

杉 下「はい、18時に終わる予定です」

山 本「由美は行ってるのか?」

杉 下「朝からスタジオにいます」

山 本「15時か。差し入れ持ってスタジオに向かうか。行ってくる」


 ○2 スタジオ

かおり「私・・・私はあなたの事がすきでした!」

      間

監 督「はい、カット!OKです。主役の浅利かおりさん。収録はすべて終わりました。お疲れさまでした。」

   スタッフ拍手する。

監 督「ではかおりさんから、一言お願いします」

かおり「あ、はい。皆さんのおかげで最後まで収録ができました。これもスタッ  フの皆さんの温かい雰囲気が良くて、現場に来るのが本当に楽しかったです。ありがとうございました」

   また、スタッフ拍手する。

 監 督「スタッフの皆さんもお疲れさまでした。一時間後に軽く打ち上げがありますので、是非、参加してください。かおりさんもお願いします」

 かおり「はい、必ず参加します」


  ○3 車の中

運転手にマネージャーの梶 由美。助手席に山本。後部座席にかおりが乗っている。

山 本「さすがに今回の撮影はお疲れだな。ぐっすり寝てるよ、かおりは」

由 美「それはそうですよ。初の連続ドラマの主役ですから。しかも今季の中ではトップの視聴率ですからね」

山 本「物になるかね?」

由 美「それはマネージャーの意見?、それと義理の妹の意見?、もしくは不倫相手の意見?どっち?」

山 本「おい、かおりに聞かれたらマズイだろう」

由 美「その話は後で。今日はいいの?」

山 本「ああ、妻には遅くなると言ってある」

由 美「姉さんも大変ね。まさか妹が旦那と不倫関係だなんで」

山 本「おれもこうなるとは思っていなかたよ」

由 美「さあ、着くわよ。かおりちゃんを起こして」

山 本「分かった」


 ○4 かおりのマンション

   鍵を回す音。

かおり「ただいま」

俊 樹「おかえり。お疲れ」

かおり「ようやく終わったわよ」

俊 樹「まあ、連続だからな。この世界に生き残るには連続の主役をやらないと。事務所NGだと無理」

かおり「分かってる。でも次も連続なんだ」

俊 樹「そうだったな」

かおり「主役では無いけどね。林 哲也さんが主役」

俊 樹「あの林 哲也!初主役じゃないか」

かおり「そうみたいね。私ファンなんだ」

俊 樹「ふーん」

かおり「何、やきもち?」

俊 樹「なんでもねぇよ」

かおり「あー、何その言い方」

俊 樹「あいつとは売れない頃、よく飲んだよ」

かおり「そうなんだ。俊樹さぁ、頑張ってよう」

俊 樹「ああ、そろそろ仕事やるかな」

かおり「そう言いながら、何にもしてないね。まるで私のひもくん」

俊 樹「うるせいな。ひもひもって」

かおり「はいはい(笑)あ、そうそう、社長と由美さん、怪しいわね。俊樹の言うとおりだわ」

俊 樹「奥さんの妹だろう。義理の妹に手を出して、あの社長もやるよな」

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かおりN「少しマンネリかな。次のドラマの相手が林 勇気。イケメンでイケボなんだよな。うーん、気になるな・・・」


 ○5 車の中

由 美「あの彼どうします?」

山 本「ん!彼って?」

由 美「かおりの彼、俊樹さん」

山 本「ああ、彼か。バレないようにしないとな」

由 美「そうじゃなくて、次の相手は林君だよ。今一番の旬の男よ。絶対にかおり      が好きになるタイプ。絶対に変なことになるから」

山 本「そうだな。彼には別れてもらうか」

由 美「簡単に別れると思う。何か条件出さないと」

山 本「金か?」

由 美「いや、違う番組の役を渡してあげれば喜びますよ」

山 本「うちの伊藤にやらせようとしていた、あの役を渡してやるか。プロデューサーは誰だっけ?」

由 美「TAGの後藤さんです」

山 本「後藤君か、明日でも電話するか」

由 美「お寿司でも食べる?」

山 本「いいね。麻布の寿司屋行こう」

由 美「あのお店、美味しいね。信夫」

山 本「おい、伸夫って、言うなよ」


 ○6 欠番


 ○7 かおりのマンション

かおり「(台本見ながら)『え、私を再起動?なぜ?ロボットじゃないわよ』なんか違うか?別パターンやってみるか『え、私を再起動?なぜ?ロボットじゃないわよ』うん、今のいい感じ。それにしても林さんとの共演は本当に楽しみだわ。俊樹には悪かったけどね。さて練習、練習」


 ○8 とあるスタジオ

   スタジオにスタッフ、林、かおりなどの番組関係者

P 「おはようございます。収録初日を迎えました。番組を作るのは一人では出来ません。皆さんの力が必要です。いわゆる総合芸術だと考えてます。そして番組の顔となる、二人を紹介します。由紀恵役の「浅利かおりさん」(拍手)

かおり「おはようごさいます。浅利かおりです。初日はいつも緊張します。でも今回は林さんがいらっしゃるので、大船に乗った気持ちになってます」

林 「おいおい、いつから船長になったんだ(笑)」

かおり「すみません(笑)。長丁場になりますが皆さんで終わりまで頑張りましょう」(拍手)

P  「それでは主役の林 哲也さんです」

林  「船長の林です(笑)主役は今回が初めてす。役者人生かけてこの作品に望みます。監督、プロデューサー、各パートのスタッフの皆さん、僕に力を貸してください。そして林もスタッフの皆さんの力になります」

    拍手が湧き上がる。

  そこに男の声「かおり、おめでとう」がかかる。

かおり「俊樹・・・」

俊 樹「かおり、よかったな憧れの林と共演できて」

林 「俊樹、お前・・・」

俊 樹「これは主役の林 哲也さんじゃないですか!俺達まだ無名の頃よく飲んだよな。演技について語ったよな。いつの間にか先に連続ドラマの主役になって、すごいよな」

林 「飲んでるのか?」

俊 樹「ああ、先に初日を祝いの酒を飲んだよ」

かおり「俊樹、やめて」

俊 樹「山本社長から、ドラマの役をもらったがその替わりにお前と別れさせられた。かおりも飽きたんだろう。俺を。すんなりと受け入れたよな」

かおり「俊樹・・・」

俊 樹「芸能界ってこんなもんさ。なあ、哲也はそう思わないか?その点、お前はうまく立ち回ったよな。俺さ、不器用だから。無理だったよ。俺は純粋に芝居をしたかったよ」

      俊樹、ポケットから銃を出す。

かおり「きゃー」

哲 也「俊樹、その銃は本物か?」

俊 樹「さあ、どうかな?撃ってみれば分かるんじゃないかな」

哲 也「俊樹、こんなことしてどうする?」

俊 樹「お前の芝居の意気込みを確認たかったかな?」

哲 也「俺の事より、自分の事じゃないか?」

俊 樹「何?」

哲 也「俊樹、この頃、芝居に対して昔より熱が無くなっているんじゃないか」

俊 樹「俺は何も変わってないぜ。だだ理想と現実は違うという事を知ったよ」

哲 也「なんだそんな事か。違うのは当たり前だ。理想だけでは腹は満たされない」

俊 樹「そんな事をいやでも知ったよ。お前はうまく立ち回った。おれは出来なかったな」

哲 也「お前はピュアだな。この世界じゃ生きられない」

俊 樹「ああそうかもしれないな。俺はあまりにも理想は求めすぎた。それよりもたいした実力も無かったの粋がっていたな。」

かおり「俊樹、そんな事はないわ」

俊 樹「ありがとう、かおり。でもうすうすは感じていたんだ。でも、哲也と朝まで語り合った時は楽しかったな。お互いの芝居の価値観の違い、芝居の考え方、朝まで飲んでいたよな。哲也、俺の分まで頑張れよ。かおりも頑張れ。社長、俺は事務所を辞めるから。実家に帰るわ」

哲 也「辞める?」

俊 樹「ああ、そうだ。これって負け犬って言うのかな?」

哲 也「そんな事言うな。誰も負け犬なんかじゃない。誰もが一生懸命に生きているんだ」

俊 樹「そうだな。皆、一生懸命生きているな。・・・負け犬かもしれないが負け犬は負け犬の生き方があるからな。スタッフの皆さん、お騒がせしました。すみませんでした」

かおり「俊樹!」

哲 也「俊樹、負け犬なんでいないんだ。ちょっとしたタイミング!そう、ちょっとしたタイミングが悪かっただけだ」

俊 樹「・・・ありがとう」

      俊樹 スタジオを出ていく。


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