はじめての……



弓槻「くっそ。好き勝手やりやがって」



夢葵「かわいいからいいじゃん」



弓槻「まぁ……。仕事道具だけしまっとくか」



夢葵「あれ? おちびちゃんは?」



弓槻「あ? そこにいるだろ……、あれ? おい、ちび助」



夢葵「あ、いた」



〈とたたたたた〉



ちび「だああ」



弓槻「おい、あっち夢葵の部屋じゃんか」



夢葵「待って! あたしの部屋はダメ! ちょっと!」



ちび「べろぉ」



夢葵「ああっ! あたしのかばん!」



ちび「んー、ばあ!」



夢葵「服も!」



弓槻「おいやめろちび助、いて……」



ちび「だあ!」



弓槻「くそっ、……、よしっ、捕まえた」



ちび「あぅ」



弓槻「おとなしくしとけばかわいいのによ」



夢葵「どうしよう。侑希のお金で買ったかばんが……」



弓槻「は?」



夢葵「これも侑希に買わせたお気に入りの服だったのに……」



弓槻「買わせた? 買ってもらったじゃなくて?」



夢葵「ゆきさんに似合う服をプレゼントしたいって侑希に言われたから、あたしの欲しかった服を買わせたの。ゆきさんのサイズに合わないやつ。で、そのままあたしが貰うことになって」



弓槻「兄貴ATMじゃねぇか。侑希も気づけよ。で、彼祭さんへのプレゼントの服はちゃんと買ったのか?」



夢葵「それはもちろん! めっちゃ真剣に選んだよ。だから、あたしにも服一着くらいよくない?」



弓槻「まぁ……」



ちび「あぅ……」



弓槻「お、なんか言ってるぞ」



ちび「えぅ……」



夢葵「すごい! しゃべれそう! がんばれがんばれ!」



ちび「えぅ、てぃ、えんう……」



弓槻「あ?」



夢葵「へ?」



ちび「えぅ、てぃ、えんう」



弓槻「こいつATMって言ってねぇか……?」



夢葵「はじめてしゃべった言葉がATM ……?」


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