第1部 第3話 赤い小箱の秘密 2
『藍』奪還作戦の詳細を聞いた後、奥司書の仕事を今日は早く終わらせて自宅へ戻った。
ばあやが手水を用意し、官位服から着替えを手伝ってもらいながら考えた。
あの箱の持ち主は、奥司書を見張ってたってことだな。
一瞬、仲達殿の態度から藍が反対派の間諜として動いているのか?と思って辛くなったが拉致されたのだから違うのだろう。だが、拉致までする必要があったのか?というとこだな。
どちらが先か?小箱が偽物と気付いて、藍を拉致したのだろうか?そもそも、どちらも実行しようとしてたのか?
とりあえず、仲達殿の手はずで動くしかないか・・・。
そんなことを考えながら寝台に上がって眠ろうとしたときである少し外が騒がしいかと思えば仲達殿がやってきた。
「涼麗様、仲達様がお越しですがどういたしましょうか?」
次女の明月が戸の前で声をかけてきた。
「明月、もう、そこに仲達殿がおいでなのでは?」
案内する前に勝手に侍女に付いてきていたのだろう。
「はい。お止めしたのですが・・・夜更けですし、女人の部屋への立ち入りは・・・」
これには、仲達殿も驚いていた。
「いや、待て、私は月涼はどこだと言ったはずだ。」
おどおどしながらも明月は答えた。
「はい。こちらでございます。」
少し声を荒げながらもぐっとこらえて仲達は明月に向かった。
「今、女人といったではないか!ふざけるでない!」
ピシャッと戸口が開き月涼が出てきた。目を細ーくしてちょっとあきれながら、
「中へ、仲達殿。声が響きますゆえ。」
そこに立っていたのは、月涼だが月涼ではない出で立ちだった。
長い髪を垂らし、白い首筋に胸元が少し開いた衣に薄い紅の羽織り纏った女人が立っていた。
「明月、茶を用意してくれる?」
明月は、すぐに部屋から去り茶の用意にいった。
「夜更けなので、このような出で立ちですが・・・お急ぎなのですか?」
仲達は、面食らって、ここへ来た理由が飛んでしまった。頭の中は真っ白だ。
なんだ?月涼に会いにきたはずなのに、目の前に立っているのは月涼にそっくりな女人である。
「少々その場でお待ちいただけますか?」
「簡易に着替えてまいりますゆえ。」
その言葉で我に返った仲達が答えた。
「いや、御簾越しで話をしよう。こんな夜更けに状況もわからず来た私が悪い。一つだけ問う。そなたは、『月涼』本人だな。」
ふっと息を吐いた後いつもの声色にして
「そうですよ。仲達殿。」
いつもの声色を聞いてなんだか安心する仲達がそこにいた。
時は、少しさかのぼって、拉致された藍の後をつけ、居場所を突き止めた下人が仲達のところへ来ていた。
「後をつけましたところ、二審の妓楼の裏手にある離れと思われるところでした。」
仲達は、下人に引き続き動きがあるか見張るように伝え。妓楼について調べた。妓楼の持ち主は、表向きは礼部尚書直轄の藩黄であり異国をもてなすためのものであった。
だがこの妓楼の本来の役目は、皇室が異国との密約を交わすためのものであり、宮中機密事項処理係の本拠地なのでそれにかかわるものしか知り得ない場所である。
仲達自身は、東宮直属の密使でもあり、我が家とは範囲が違うだけで似たような裏方の仕事だが、
それはそれで連携をとっていない為、宮中機密事項処理係の本拠地だとは知らずに、異国のスパイが宮中に入り込んでいると思いその上、奥司書まで入り込んでいるとなるとかなりのものであり、これは一大事であるとすぐさま東宮に事の顛末を報告した次第で有った。
(ちなみに月涼は仲達が武官でありながら隠していることから自分たちに近しい者と推測していた。
情報漏れの範囲を狭くするためとはいえ、逆にややこしい状態を生んでしまった結果である。)
だが、東宮からの返信は、月涼と動けの一文だけだった。こんなに一大事なのにと頭の中は、大混乱である。どうして!!!と叫びたくもなった。
居ても立っても居られない気持ちで体が先に動いて今である。
「で、こんな夜更けにその文のせいで駆け付けたんですか?」
月涼は、あきれながら聞いてみた。
「そうだ、当り前ではないか・・・こんな一大事なのにだぞ!お前と動けの他は、何にも書いていない文だぞ。そもそもお前は一体何者なのだ?」
仕方ないこれは、連携命令だろうと思った月涼は正直に答えることにした。
「私ですか?といより我が家でしょうね。仲達殿の裏の仕事とあまり変わらないお仕事です。東宮様よりの文なので言っちゃいますが・・・我が家は、宮中機密事項処理係の家系です。私は中人として育てらましたのでこんな感じです。」
仲達は、頭の中で思った・・・なんていい加減な説明だと係名言えばわかるとだろう見たいなこの説明。
「もっと、ちゃんと説明してくれ!!」
怒鳴る仲達を無視し、藍の居場所を確認することにした。仲達の行動から推測して、別件・別部署での動きのはずが絡まってきたのが分かったからである。
舎人で書類探しだけでよかったんじゃなかったのかよ・・・とぼやく月涼だった。
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