男装して!今日も皇室の秘密を守ります・・・!!今回は、ただの舎人のはずですが?

華楓月涼

第1部 第1話 宮中機密事項処理係

ふぁ~、瞼がくっついて開かないよ。眠すぎる・・・

桶に手水を持ってきてくれているばあやに、寝所から出たくないと我ながら子供か?という態度でいると

掛布をはがされて無理やり起こされる。これが私の毎朝である。


「本日から出仕先が変更です。出仕衣も変更されて昨日確認したばかりではございませんか!!」と少々お怒りのばあやの叱咤が飛ぶ。

「そうだね・・・変更だね。今日から官位衣だったね・・・」

「そうでございます。無くとも晒も必要でございますのでいつもより時間がかかるんですよ」


無くとも・・・無くとも・・・そんな言い方ないんじゃないかな?

ねえ、ばあやと頭の中で・・・とりあえず、やっぱりぼやく

「でもさ、中書省の舎人だしさ、誰とも会わんよ。ひたすら、書物整理と記録に明け暮れるんだし・・・」


そんな、私を無視してばあやは、来ていた寝衣を取り去り素早く晒を巻き付けてきた。

うっそんな意地悪く巻かなくとも・・・

「分かった。ちゃんとするから、もうちょい優しく・・・してくれるかな」

「わかっておりません。晒だけではございませんよ。頭も結い上げなんですから時間が足りません。」

そういうと、より一層手早く動くばあやに翻弄されながら出仕の支度が進む中、父からの伝達が来た。


伝達内容は、いつも通り出仕先の人員配置とその人員の特徴である。

支度をしながら目を通し頭に入れた後伝達者に伝えた。

「あい分かったゆえ、太師殿へ本日より出仕と連絡されたし。」

あー今日から官位衣か・・・厠が面倒だな・・・。男なら前をちょっと開けるだけで良いんだけどさ。それに、刀は、重いんだよな・・・文官なのに。

(内舎人は、内乱時に対応できるよう一応帯同しないといけない決まりである。)

とりあえず馬車も待ってるし向かうとしますか。


馬車に揺られながら、宮中中書省 司書房へと向かった。

私は今日からそこの舎人として出仕へと変更されたからだった。


ドン・ドンと小太鼓で合図が鳴り通達が読まれる。

「本日より出仕致します。内舎人 月涼殿でございます。それでは辞令の通り配置への案内を速やかにされたし」


さて、配置については聞いているが勝手に奥司書まで入って良いのか?

どこにでも幅を利かせてくる輩がいるしな・・・と思い見渡すとつかつかと歩み寄るものがいた。


文官にしては、かなりの体格である。見た目は完全に武官だ。

目つきも鋭いしな・・・よくこの部署へ配属されたな等々巡らせていたら声を掛けられた。

「当の直上である。右散騎常侍 仲達と申す。この直轄で分からぬことが有れば聞くように。以前は、殿中省におられたということなので決まり等を言わずとも好いかと思う。では、」


いやいや、っちょっと・・・名前伝えるだけか!!

そういえば父の伝達の中にあったな一人だけ武官が。


まあいい、ボケっと立ち尽くすわけにいかないし居場所作んないと1日始まらないしな。

「仲達殿、配属にあたり奥司書での記録整理をおおせ使っています。中へ案内だけお願いできますでしょうか?それと、整理するにあたり掃除道具を用意したいのですがそれは、通達係に伝えれば?」

「月涼殿、奥司書の門番がここへもうすぐ来るのでそれまで待たれよ。ここから、少し離れてもおるゆえ。掃除道具は、その門番に言えば一式そろえると思う。分かっておるかと思うがくれぐれも通符を持たぬものを中に入れぬように。門番といへどもですぞ。」

「はい・・・では、そこの中庭で待っております。」


しばらくすると門番と思われる若者が勢いよく走ってきた。なんだか、そそっかしそうだな~

と目を凝らしてみると・・・前回の出仕先にいた藍だった。

藍は、私だとわかったらしく遠くから怒られるのも忘れて

「月~!!久しぶりだなぁ」と大声で叫びながらやってきた。


あわてて、藍にかけより藍の口を塞ぐ。

「ばかか。お前は、こんな場所ででっかい声出して!!外じゃないんだぞ!!」

「おっほんとだな。つい、懐かしくてさ。1年ぶりだろ~元気そうじゃん。あっっ忘れてた新しい司書様の案内に来たんだった。」

「お前かよ・・・門番」

「えっそうだけど・・・えー!!司書様なの~!!」

「だから、でかい声出すな!」

「うっすまん。月~めっちゃ出世してんじゃん。なんでだよ~。」

「こっちにもいろいろあるんだから、あとで話すから行くぞ。」


藍は、わざとらしく、こちらでございます司書様などといい、奥司書へ案内してくれた。


奥司書についてから、藍にとりあえず掃除道具が手配されるように御史台に行ってもらい奥司書の

保管状態の確認と点検から始めた。


案の定、汚い・・・埃に蜘蛛の巣・・・一人でやるのか?これ?

中を見たらダメな奴ばっかりだからな・・・誰かに助けてとはいえない。

例え、多少なりと信用している藍でもだ。

「門番といへども・・・」が頭で廻る。

これ、分かってて言ったんだろうな。仲達さん・・・。


「月~戻ったぞ、掃除道具持ってきたぞ!!俺も手伝うから中に入っていいか?」

と言いながら藍が戻ってきた。


「良い分けないだろう!!!おバカか。こっちだって中に入れていいならしてもらうよ。蜘蛛の巣とか気持ちわりーし。とにかく水汲んでそこに並べておいてくれ。」

「へーい。」

「それから、ほかに人がいるときは、言葉遣いも気をつけろよ。お前、板打ちにあうぞ。」

「ひーおっかねえこと言うなよ、ま、それもそうか、今は司書様だしな。」


時折、藍と雑談を交えながら、その日は、掃除に明け暮れた。

まぁ門越しとはいえ、話し相手もいるし孤独な出仕ではないので、ちょっと気も楽だと思えた一日だった。当分こんな感じで過ごすんだと思っていた。そんな出仕初日であった。

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