第494話 情報収集

 彼らが実際の計画について話を始めたので俺は聞き耳を立てる。


『それで■■はいつにするのだ?』


 まずは作戦の実行時期について話すようだ。


『それについて他の二帝国ときちんと■■■■必要があるでしょう』

『足並みを■■■にはそれなりに時間がかかるからな。きっちり同じ時期に仕掛けないと効果も半減してしまう。それでは■■がない』

『そうですね。きちんと■■■■に動いてもらえるように調整する必要があります』


 ふむふむ。どうやらここ以外にも魚人の国が二つあり、そこと連携して全世界的な侵略行為を行うつもりらしい。


 時間がかかると言っているようにそれぞれの国とはある程度距離があるのだろう。それにここまで大規模な作戦となると、タイミングを調整するのにかなり時間がかかるはずだ。


 少なくとも一週間やそこらで侵攻がはじまるということはないだろう。恐らく少なく見積もっても二カ月くらいはかかるのではないだろうか。


 しかし、念のためひと月くらいで見ておくのが無難か。


『それぞれの■■はどうなっておる?』

『そうですね。わが軍は前回小さな島国に■■した際に、十万程の兵を失ってしまったので、おおよそ四千九百九十万程でしょうか。他の■■も五千万程度かと思われます』

『全戦力は約一億五千万か。それで■■■に一斉侵略というのは可能なのか?』


 ほほう。


 海底の全兵力を教えてくれるなんてとても優しいじゃないか。実際は俺達がこんな所に居るとは思っていないからだけどな。


 魚人の国の全戦力は一億五千万。予想していた以上に海底の国はデカいらしい。それもそうか。世界の多くを占める海の中に三つしか国がないんだもんな。それを考えるとむしろ少ないくらいだ。


 対してラックの全戦力が三百万程度だ。約五十倍の差。数の上では大敗北だ。


 しかし、ラックなら地上であれば魚人を何の苦も無く倒すことが出来るはず。奴らの侵攻する場所さえ押さえられれば、撃退というだけなら何とかなりそうな気がする。

 

 ただ、世界は広すぎるので俺達だけで全ての魚人を逃さないというのは難しいと言わざるを得ない。だから探索者組合にも天音の叔父である新藤さん経由で話を持っていって協力してもらうしかなさそうだ。


 世界規模の危機に各国が一丸となってくれればいいんだろうけど、中々そうはいかないんだろうなぁ。それぞれの国にはそれぞれの思惑がある。なんだかんだ自国の利益を得ようとしてまとまらない気がした。


『それで、各国の■■■■はどのようにするつもりだ?』

『はい。基本的に各国に接している場所を担ってもらうのが■■■でしょう。それ以外の場所は近い国が兵を■■するしかないかと』

『ふむ。それもそうか。我らは■■■■が担当になるか』

『おそらくそうなるかと』


 多数の魚人が何かを持ってきたと思えば、それはおそらくこの世界の地図だった。海底の地形や国々の情報が事細かに記載されている。ただ、これは海の中を中心に書かれているので、大陸は輪郭が描かれているに過ぎない。


 これは非常に有用な情報だ。海底の地図なんて見れるもんじゃないからな。記録を取っていた置いた方がいいだろう。


 ただ、ここは深海。スマホで写真を撮ろうにも真っ暗で写らない。他の手段を取る必要がある。そういえば七海が便利な魔法を手に入れたはずだ。それを使ってもらおう。


「ん?」


 俺が後ろを振り返ってみると、そこではお茶会が開かれていた。


「何してるんだよ……」

「それは見ればわかるでしょ」


 呆然とする俺に天音がティーカップを軽く掲げて見せる。


「いやそういうことじゃなくてな?」


 俺が聞きたいのはそういうことじゃない。


「話はお兄ちゃんが聞いてればいいでしょ?」

「お、そうだな」


 七海にそう言われてしまってはしょうがない。しかし、こればっかりは七海に協力してもらう必要があった。


「七海、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど」

「もうお兄ちゃんはしょうがないね」


 七海は満更でもない様子で俺の方にやってきた。


「それで何をして欲しいの?」

「ああ。あれが見えるか?」


 コテンと首を傾げる七海。


 可愛い。


 しかしそれはこの際置いておいて、俺は影の入り口から地図石板を指さした。


「うん」

「あれを複写魔法でこの紙に写し取って欲しいんだ」

「オッケー」

「あ、複数の魔法って使えないか」

「一瞬だからどうにかなるよ」

「そっか」


 七海は俺の指示に従って俺が用意したクッソデカい何枚かの紙にコピーしてもらった。コピーされた紙を見てみると、間違いなく地図石板の内容が記載されている。


「どう?」

「おう。流石おれの妹」

「えへへっ」


 覗き込んできた七海の頭を撫でてやると、頬を赤らめて嬉しそうに微笑んだ。


 それからも七海達がお茶会をしている一方で魚人達の話を聞いて情報収集を続け、貰えるだけ情報を貰った後で、俺達は地上への帰還を果たした。


「うーん、つかっれたぁ!!」


 自宅に帰り着いたら、七海はソファーに突っ伏してぐったりとした。今日一日魔法を使いっぱなしだったんだから仕方がない。


「無理させて悪かったな」

「んーん。世界の危機だもんね。仕方ないよ」

「そうだな。これが終わったら少しゆっくりしよう」

「そうだね」


 俺達はご飯を食べた後で眠りに着くのであった。

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