第477話 三分の一の行方
「まずは零にはこれを」
俺はまずは一番安全な頼れる我らがパーティの常識人である零からプレゼントを渡すことにした。
「ありがとう。早速開けさせてもらうわね」
「ああ」
零は俺から包みを受け取るなり包みを取り去る。
「これは……綺麗な髪飾りね♪」
彼女は包みの中から出てきた髪飾りを見た瞬間、嬉しそうに顔を綻ばせて俺に微笑んだ。
ぐはっ!!
落ち着いた雰囲気のお姉さんの渾身の笑い顔の攻撃力は核兵器級の攻撃力があるので使用は控えてほしいところだ。
「よ、喜んでもらえてよかったよ」
「ええ……あの、付けてもらえるかしら?」
思わずドギマギしながらぎこちなく笑い返すと、零から思いがけないお願いが飛んできた。
「い、今か!?」
「せっかく頂いたからには付けたいもの」
俺がオドオドしながら返事をしたら、ニッコリと俺に笑いかけた。
「そ、そっか。分かった」
「ええ、お願いね」
髪飾りを受け取り、俺は零の頭に恐る恐る付けてあげた。
「どう?似合うかしら?」
俺が零から少し離れると、彼女は俺に髪飾りを見せつけるようにポーズを決める。
「あ、ああ……零の大人な雰囲気に合っていて、凄く似合っているよ」
「そ、そうかしら。ありがとう」
俺があまりの破壊力に呆然としつつ褒めたら、満更でもないように顔を赤らめて俯いてしまったので、セーフだったと思いたい。
「ほら、次は私の番だよ!!」
俺と零の間に割り込むように入ってきたのは七海だ。
「はいはい分かってるって」
「えへへ~」
俺が全く手がかかる妹だなと思いつつ頭を撫でててやると、頬を緩ませて頭を押し付けてくる。
はぁ……どうしてこんなに妹は可愛いんだろうな。
「それじゃあ、七海へのプレゼントはこれだ」
「ありがとー。お兄ちゃん!!」
名残惜しいけど、七海から離れてプレゼントを渡してやる。
「わぁー!!ティアラだ!!」
七海は俺に許可を取ることもなく、すぐに包みを破り捨てて、中から出てきたティアラを掲げて喜んだ。
「ねぇねぇ。私にもつけてよお兄ちゃん」
「分かった分かった」
七海は俺に近づいてくるなり、上目遣い&涙目というあざとさ二百%の仕草で俺におねだりしてくる。
そんな妹の願いを突っぱねる兄はいないので、俺はすぐにめんどくさそうに頷いた。
勿論全く面倒なことは何もない。
ただ、俺が頭につけてやろうとすると、まるでキス待ちの顔みたいな七海の顔がある。
「ほら」
「わぁ~い!!どう?どう?似合う?」
全く何やってるんだと思いながら頭に付けてやったら、七海は何食わぬ顔ではしゃいで俺から距離をとって飛び跳ねて俺に近寄ってきた。
「ああ。お姫様になったみたいだぞ?」
「えへへ~。ありがとう嬉しい!!スーハースーハー」
本当に姫そのものにしか見えなかったので事実を述べたら、七海は俺に抱き着いてなんだかいつも以上に思いきり息を吸い込んでいる。
「おいおい」
ちゃんと風呂に入っているとはいえ、嗅がれると俺も臭いのかと心配になる。
「ぷは~、病みつき」
「止めろよな」
「妹にとってアニニウムの摂取は重要だから駄目だよ」
「はぁ~……勝手にしろ」
なんだか恍惚の表情を浮かべているので、俺は言葉だけでも止めさせようとするけど、七海は謎理論を展開して止める気は無さそうなので諦めた。
元々止めさせる気もないので別にいい。
「そろそろ私の番じゃない?」
俺と七海のやり取りにインターセプトしてきたのは天音。
「天音にはこれだ」
「ありがと」
七海が俺から離れ、天音にプレゼントを渡した。
「それじゃあ開けるわね」
天音も受け取ってすぐに包みを開けてしまった。
「これってロケット?ま、まさか……!?」
「いやいや、別に他意はないぞ?好きな奴の写真でもいれたらいい」
自分へのプレゼントの正体を知った天音は、俺が以前考えていたことを想像したらしいので、否定しておいた。
流石に天音にそういう気持ちがあるとは思えないからな。
「す、好きな奴なんていないわよ!!」
「そ、そうか。ま、まぁ好きな奴以外いれちゃダメってわけでもないからな。誰かの写真を入れるなり、売るなり、捨てるなりしてくれ」
「た、大切にするから安心しなさいよ!!」
俺の言葉にツーンとそっぽを向いてしまった天音。俺としては変なことを口走ってしまったので、慌てて取り繕うが、彼女はそっぽを向きながらロケットを大事そうに胸に抱いた。
その柔らかい二つの山の形が変わる。
相変わらず凶悪な破壊力をもつ兵器を持っているな。
「着けるか?」
「う、うん。お願い」
俺はこれまでの流れに沿って天音にもロケットをつけてやった。
「どうかしら?」
「うん、良いアクセントが増えて天音の魅力を引き出してるんじゃないか?」
「そ、そう。まぁいいわ」
天音も前の二人と同様に俺に尋ねるので、率直な感想を言えば、彼女も満更ではなさそうな表情になったので切り抜けたと言えるだろう。
「ノエルにはこれだ」
「わぁ~、私ももらえるデスか?ありがとうございます!!」
俺はソワソワしているノエルの許に行き、プレゼントを渡した。
「こ、これは!?」
中から首輪みたいなチョーカーに近い物が出てくるなり目を見開いて驚いたノエル。
「き、気に入らなかったら捨ててくれ」
「首輪最高デスよ!!これで普人様の所有物デスよ!!ふへへへへっ」
「違うわ!!」
俺として悪い気持ちにになったので、捨ててもいいと言ったんだけど、彼女は逆にむしろだらしのない顔になった。
「早く着けてほしいデスよ?」
「断る!!」
俺は後ろを向いてこれ見よがしに首を差し出すノエルだけど、俺は断固とし拒否をした。
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