第39話


 テーブルに木材と石材を取り出したまではよかったが、具体的にどんな打撃武器を作るのかが見えていない。



「重量がある武器で打撃となれば、ハンマかメイス辺りが妥当な所かな」



 こういった具体的な案がない漠然とした注文というのは、よくあることなので初めての試みという訳ではないのだが、やはり具体的なものでない以上作り手側のセンスが問われる。



 いろいろと小難しく考えてしまったが、純粋に重量のある武器ということで、今回はハンマーを作ることにした。



 他にも重量のある武器はあるのだが、最初ということもありできるだけ難易度の低いものを選択したつもりだ。



「よし、とりあえず今回もプロダクトから試してみるか」



 いきなり手作りからやっても上手くいかない可能性を考慮し、まずは杖の時と同様にプロダクトから試すことにする。



 使用する素材は木材が四個と木の柄が二個という苗木を育てていれば簡単に手に入るものであるため、躊躇うことなくプロダクトでハンマーを作製する。ちなみにできたものはこれだ。




【木のハンマー】:ごく簡単な工程で作られた練習用のハンマー。練習用に作られているため、能力はあまり高くない。 レア度:コモン 耐久度:50 / 50 効果:【STR 上昇 最小】、【AGI 低下 最小】 品質:最低




 結果はご覧の通りとなったのだが、思えばハンマーに関しては前に作製ているということに気付き、何をやっているのだと苦笑いを浮かべる。



 とりあえず改めての確認事項ということで無理矢理こじつけ続いて同じプロダクトで石製のハンマーを作製する。




【石のハンマー】:ごく簡単な工程で作られた石製のハンマー。石製で作られているため木製よりも能力は高いが、高性能と言うにはほど遠い。 レア度:コモン 耐久度:60 / 60 効果:【STR 上昇 最小】、【AGI 低下 低小】 品質:最低




 材質が石製に変化したことで、耐久度が少し上昇したこととAGIの低下が一段階上がったこと以外にこれといった変化は見られない。



 しかし、おそらくだが重量的には木製よりも重さがあるのは確実なので、次に性能を高めるべく手作業による作製に移行する。ちなみに使った素材は石材四個に木の柄が二個である。



 まずは石材四個とは別に新たに二個の石材を重ね合わせることで、重量のある石材を作り出す。そして、木の柄自体も木材から作り出すことで、使用する素材そのものの品質を高めることに成功する。



 あとは生み出した二つの素材を合体させることで、一つのハンマーが完成する。早速鑑定してみると、以下のような結果が表示された。




【石のハンマー】:手作業によって作られた石製のハンマー。重量のある石材で作られているため通常よりも重量がある。 レア度:コモン 耐久度:80 / 80 効果:【STR 上昇 低小】、【AGI 低下 低小】 品質:劣化




 プロダクトで生み出したハンマーよりも性能は上がったが、まだ手を加える余地がありそうなのでそのまま作業を続行する。



 それからいろいろと試行錯誤を重ね、結果的にこのようなハンマーが完成した。





【石のハンマー+】:手作業によって作られた石製のハンマー。手作業により丁寧かつ丹念に作られており、加えて重量のある石材で作られているため通常よりも重量があり性能もそこそこである。


 レア度:アンコモン 耐久度:150 / 150 効果:【STR 上昇 低中】、【AGI 低下 低小】 品質:中質




 特筆すべきはやはり耐久度の上昇と品質が中質にまで上昇したところだろう。それに加え、AGIの低下を低小に抑えることができたことも評価すべきではないだろうか。



 確認のために一応自分の手で持ってみたが、当然というべきかハンマーが地面から離れることはなくまるで山のようにビクともしなかった。



 俺のSTRが低いという点もあるだろうが、それとは別に戦闘職でないということも関係しているのではという考察も踏まえて、今回の重量のある武器の製作は一旦これで完成という形を取りことにした。



 好きなことをしていると時間が経つのが早いとはよく言ったもので、気付けば外が真っ暗になっていた。とりあえず一通りの作業が終了したので、一度朝に時間を進めることにした。



 この時ケダマとドロンが何をしていたのかといえば、暗くなった畑で収穫をしたり他の素材を一心不乱に集めていたということを余談として付け加えておこう。



 朝になり再び活動を再開した俺は、今回の生産活動で完成した杖と重量のある武器であるハンマーを納品すべく生産ギルドへと足を運んだ。



 ギルドに行くと、俺の姿を目聡く見つけた例の受付嬢が声を掛けてきた。



「これはナゴミ様、本日はどのようなご用向きでしょうか?」


「クエストに出されていた武器の納品に来た」


「それはそれは、ではこちらで納品を受け付けておりますので、ギルドカードと品物を出していただいてもよろしいでしょうか」



 彼女にそう促され、俺は受付カウンターにギルドカードと作製した杖・ハンマーを提出する。



 今回は騒ぎを起こさないよう、作製した品物の性能を抑えてあるため受付嬢もこれといって叫ぶこともなく問題なく納品できた。



「それでは、こちらのクエストは依頼達成となりました。それとナゴミ様、おめでとうございます。今回の依頼達成でギルドランクが石級から鉄級へとランクアップしました」



 どうやら常時出されていた納品系クエストと、今回のクエストを達成したことでランクアップ条件を満たしたらしく、石級から鉄級へと昇格できたようだ。



 受け取ったギルドカードを見てみると、本当にランクが鉄級になっていた。ちなみにギルドカードの内容はこんな感じだ。




【プレイヤー名】:スケゾー


【職業】:生産職


【ギルドランク】:鉄級(アイアン)


【クエストクリア回数】:31(木:9回 石:22回)


【称号】:なし




 これで新たに鉄級に指定されているクエストを受けることができるようになり、クエストの報酬も跳ね上がる。



 納品も終わったので、更なる生産をするべく再びマイエリアへと戻ろうとしたが、せっかくギルドランクが上がったので念のため鉄級のクエストを確認してみた。



 内容は特定の品質以上の品物の納品がほとんどで、難易度としては今までのクエストとは比較にならないほどのものとなっていたが、その分報酬もお高くなっており能力の高い生産職であればいい稼ぎになるだろう。



 俺的にはこれといって受けたいクエストがなかったので、一度マイエリアへと帰還することにした。

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