異変の塔
惑星開発は外側へ
惑星開発は惑星の内側だけに留まらない。
惑星内部をくり貫いて獲得した各種資源の全てが、惑星内部の開発だけで消費出来るものでは無い。
惑星開拓ギルドへの納品も同時に行われているのだが、惑星内部の開発が行われ暫くすると、獲得した資源全体の数%程度を納入するだけで済むようになる。
この為、リソスフィアフォーミングが本格的に行われるようになると、資源という物は炙れてしまうのだ。
その消費出来ない資源を活用する為に、惑星内部の開発と共に、惑星の外側へと向かう開発も同時に行われる。
本来であれば、惑星に居住している原住民等への教育が施されて行われるこの開発だが、ピオニアは自身の愉悦を求めた為にそれを行わなかった。
それ故にこの惑星ゼイトゥンⅢに住まう者達は見ることになった。
遠くにうっすらと空気の壁越しに見える、青ずんだ巨大な塔を。
それは徐々に徐々に空の頂きを目指し伸びていく。
ゼイトゥンⅢの住民達はこれを見て様々な声を上げる。
あるものは、神が降臨なされる予兆だと。
あるものは、悪魔が侵攻してきたと。
あるものは、地下から何かが這い上がってきたと。
そして、ピオニア達の方針もこの段階になると変化が起きていた。
今までは惑星全体へと自分達の存在が露見しないように活動を行っていた。
だが、莫大な量の資源に支えられ相応の軍事力を確保し維持することに成功する。
その結果、今回の行動に繋がる方針の変更が行われたのだ。
ピオニアはこの時点で、今のゼイトゥンⅢに住む全住民ではどう足掻いても対抗出来ない程の軍事力を確保出来たと確信していた。
事実ピオニアの保持する軍事力は凄まじい物である。
リソスフィアフォーミングで建造した循環型人工環境建造物の地下第一層部分は、これら軍事力を格納する格納庫と生産場としてその全ての領域を使用している。
機械的な物もあれば、生物的な兵器が存在している、非常に多様性に富んだ軍事力であり、様々な状況に対応出来るラインナップとなっている。
そして当面の間は、この古代サブカルで云う所の、ライトノベルのファンタジー世界のような文化レベルであるゼイトゥンⅢの雰囲気を残す為、生物兵器の内、ファンタジーな世界に居ても、問題ないだろう見た目の物を活用して防衛計画を打ち立てた。
数ある支柱―ゼイトゥンⅢの住民からすれば謎の何か―の周辺を守護する目的で配置された、銀河規模で発展する文明レベルの技術で作られた生物兵器達。
アーデンの森のエルフ達は、これらを神の眷属として崇めた。
それに比して、ピオニアを神として崇めていない者達は、急に現れた脅威となり得る生物に怯えた。
その結果、世界の世相は混沌へと向かって行くことになっていく。
ピオニアの惑星開拓は、軍事力を得たことで露出を控えなくなったことで、アーデンの森にのみ限られていた影響が、より多くの者達へと無作為に与えられることになって行く。
それをピオニアは様々な視点で愉しんでいた。
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