第33-2話 「何言ってるの?」
言うつもりなんてなかったのに、熱くなってしまった私は思わず新谷んとうるはちゃんがキスしていたことを指摘してしまった。
これで私があの場面を目撃したこともバレてしまうし、いいことなんて何一つない。
「ちょっと待て。確かにキスはしてたけどな、あれは……」
「ほら‼︎ やっぱり付き合ってるんじゃんか‼︎」
必死にキスしていたことについて弁解をしようとする新谷んだが、その全てが私には嘘くさい言い訳の様に聞こえてしまう。
「話を聞けよ」
「聞いてるよ‼︎ なんで何回も新谷んとうるはちゃんがキスされた話聞かされないといけないの‼︎」
「あれはうるはが一方的にしてきた……っていうとうるはに悪いけど、俺からうるはにしたわけじゃないし、付き合ってもいないんだって」
「そんなの信じられないよ……」
実際2人がキスをしているところを目撃してしまったのだから、どれだけ付き合っていないと言われたところで信じられるはずもない。
仮にうるはちゃんから一方的にされたのだとしても、新谷んとうるはちゃんがキスしているシーンは私にとってかなりショッキングだったのだから。
「信じられないってなら信じさせてやるよ」
「……へ?」
新谷んが何を言っているのかを考えるよりも先に、新谷んの顔が近づいてきて動くことすらできず新谷んにキスされてしまった。
キスされた瞬間、私の思考回路は完全に停止したが、反射で新谷んを両手で突き飛ばしていた。
「ちょ、ちょっと何やってるの⁉︎」
「キスだよ。見たら分かるだろ」
「いや、そういうことじゃなくて……なんでキスしてるのって聞いてるの‼︎」
「俺が椎川が好きだからだよ」
新谷んの波状攻撃に私は思わず後ずさりしそうになる。
「な、何言ってるの? 新谷んには彼女がいるし、私には彼氏がいるんだよ? 彼氏がいる女の子のことは好きにならないはずなのに……」
「俺には彼女なんていないし、椎川に彼氏がいないことも知ってる」
「な、なんでそれを」
「色々あっあんだよ。それに、椎川が彼氏がいるって嘘をつき始めた理由が俺と一緒だってことも知ってる」
「……」
なぜかは分からないが、新谷んは私に彼氏がいないことを知っているようだ。
私に彼氏がいないことを知ってて、嘘か本当かは分からないにしても新谷んはうるはちゃんとは付き合っていないと言い張っている。
そんな状況で私にキスをしたってことは……。
「椎川もさ、俺とうるはが付き合ってるのは嘘だって知ってたし理由も知ってるんだろ?」
「……」
何も言えなくなってしまった私に近づいてきて、新谷んは私を抱きしめた。
「大変だったな」
「……ひぐっ。……っ。ふぇぇぇぇん」
私の事情を本当の意味で理解してくれるのは、やはり私と同じ体験をした人だけだと思う。
先程は思わず突き飛ばしてしまった私だったが、今度は新谷んに抱きしめられたまま、腕の中で大粒の涙を流していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます