白い欠片たち

あれは

とても寒い冬の

ある日の午後でした

あたし達は

手袋越しに手を繋いで

ふたりで歩いていましたね


雪がふわり、ふわりと

舞い降りてきて

ふたりで一緒に

空を見上げました


灰色の空から

いくつも、いくつも降りてくる

白い欠片たち


ふたりの髪に、頬に、肩に

降りてくる

白い欠片たち


あなたが

黒いコートの右の袖口に止まった

小さな欠片を

そおっと

あたしに近づけて


きれいな六角形の結晶を

見せてくれました


きれい、と

あたしが言うと

あなたは満足そうに

笑顔を見せましたね


少しだけ、ふたりの周りが

暖かくなった気がしました


とてもとても寒い冬の午後の

ことでした






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