君の影

陽が沈みかけた海を

君はじっと見ている

その背中を

僕は、少し離れて見つめていた


いつも凛と背筋を伸ばしている君は

影までもが真っ直ぐに伸びている


僕の足元まで伸びる君の影


君が振り向かないのを

知っているから

僕はそっと、君の影に触れた



影になら触れられる

影にしか触れられない



だって僕は

君が

誰を想って海を見つめているのか

知っているから



できることなら

君の影を捕まえたい


影でもいいから


影でいいから


この腕のなかに包み込んで

君を

僕のものにしたい


叶わぬ想いを抱えた僕を

海風が冷たく撫でていく


君の背中を通り越した海風が

冷たく撫でていく



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る