神の選定
神は言った。
「まず、この地球から半数に消えてもらう」
「な……何を馬鹿なことを!」
ある男は真っ向から反対した。
「これまでの振る舞いから、あなたが神であることは認める。しかし、それは余りにも酷な話ではないだろうか」
神は男の意見など聞く耳持たぬようで、男の話も程々に、右手をかざした。
するとどうだろう。
一瞬のうちに男は消えてしまった。
いや、男だけではない。
その場に居た者のおよそ半数が消えたのだ。
「そ、そんな」
皆一様にこの現象に驚いた。
「ふむ。全人類の半分が消えたな」
そう、神はその場に居た者だけでなく、全人口のちょうど半分を消したのだ。
「それでは、また半分消えてもらおう」
神は無慈悲にもそう言った。
その言葉に反論できる者はいなかった。
もし反論すればさっきの男の様に真っ先に消されてしまうのではないかと考えたからだ。
そう考えている間にも神は右手を挙げる。
やはり同じように、地球上から半分の人間が消えた。
残ったのは最初の人口のちょうど、4分の1だった。それでも神は、右手をかざす事を止めなかった。
人口はその度に減っていく。
神は考えていた。
増えすぎた人間をどうにかしないといけないと。
人間はなんと傲慢なことか、神の与えた地球だけでは飽き足らず、とうとう宇宙にまで進出し別の星をも食い尽くそうとしていた。
それでも、人類全てが悪いのかといえば、そうではないことを神は知っていた。
ある一部の層が私利私欲の限りを尽くしていることを。しかし、その一部を消した所でヒトはもはや毒されていることも。
見兼ねた神は1つの結論に至った。
人類全てを無に帰すことは気の毒だ。
「ならば、2人だけを残しそれを新たなアダムとイブにしよう」
そして現在、神は人々の選別を行なっていた。
ある1つの基準を定めて。
遂に人類は2人となった。
「……お前達が残ったのか?」
神は、目の前の結果に少々驚いていた。
「は、はい。私達が残りました」
男は言った。
「ふむ、この結果は予想していなかった。が、答えとしてそう出たのなら、私も受け入れなければなるまい。お前たち二人が新世界のアダムとイブである。では、人の子よ健やかなれ」
そう言って神は消えた。
残ったのは男が2人。
彼らは互いに愛し合っていた。
そして、神が定めた生き残れる条件も、地上で最も愛し合っている2人であることだった。
それからというもの、彼らは人目を気にすることなく互いを愛し合いその一生を終えたのだった。
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