第68話第十三章13-4ガレント軍

13-4ガレント軍


 ルシフルの港町で俺たちは秘密結社ジュメルとか言う連中から巻き上げた黒い「鋼鉄の鎧騎士」の外装を俺の「鋼鉄の鎧騎士」に装着させていた。

 それは驚くほど順調にに進んでいた。

 

 「まったく、こいつ専用に作ったんじゃないかってくらいぴったりとくっついたな?」


 「規格はどこもかしこも似たか寄ったかだからだろう? おかげで難なく取り付けられたな」


 ルデンが足場から降りてきてベリアルと話している。

 俺も反対側の足場から降りてくる。


 大元は俺が今乗っているオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」だから当たり前と言えばあたりまえだ。

 技術的にもガレント発のこれは連合軍に渡された機体を元にあちらこちらの国の参考に使われている。

 となれば当然の事外装の取り付け位置やその方法もマネされるからどの機体も基本は同じとなる。

 だから傭兵の持ち込む「鋼鉄の鎧騎士」は出元が外装を外さないと分からないものが多い。



 「しかし、こいつはまたとんでもないな」


 「真っ黒だからな、さながら黒騎士か?」


 オクツマートも古い外装を向こうに片付け終わり換装の終わった俺の「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。

 見た目は真っ黒なごつい「鋼鉄の鎧騎士」になったわけだが、イザンカに残してきたミスリル製の外装には遠く及ばないだろう。



 「ふむ、ずいぶんと様変わりしたもんだな?」


 ロバートがこちらに来て同じく「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。

 

 「これで少しはマシになるだろう。外装が新しくなっただけでも防御力は上がるはずだからな」


 「それでここの金目なモノは本当にもらっていいのか?」


 「ああ、かまわない。俺たちはここの金目なモノ全部は持ちきれないしな」


 ロバートは俺がそう言うと笑って拳を差し出す。

 俺もロバートに拳をぶつけてにやりと笑う。



 秘密結社ジュメルってのはかなりの財を蓄えていた。

 多分ここの財産を根こそぎ持ち帰れれば一生遊んで暮らせるだろう。


 しかし俺たちには目的がある。

 旅に必要な分だけもらって残りはロバートに引き渡した。

 まあロブの港村に今まで迷惑をかけて来た慰謝料の様なモノだ。



 「それでお前さん方はもう行くのか?」


 「そうだな、準備が整い次第に貿易都市サフェリナに向かおうと思う。そこまで行けばガレント軍の動きも詳しく分かるだろう。出来れば奴とはこのサージム大陸で決着をつけたい」


 俺がそう言うとロバートは頷いてから今度は握手を求めてくる。

 


 「ロブの村近くに来たら寄ってくれ。歓迎する」


 「ああ、分かった。世話になったな」



 俺たちはロバートと握手を交わしルシフルの港町を出発するのだった。



 * * * * *



 「そう言えば一つ気になる事が有ったんだが」


 『どうしたオクツマート?』


 俺たちは「鋼鉄の鎧騎士」でなるべく目立たないように夜を主体に移動をしている。

 今も暗くなり始めたので動き出したところだ。

 そんな中オクツマートが気がかりになった事を言いだす。


 「いやな、この黒い外装のあの『鋼鉄の鎧騎士』なんだが、どう見ても中身がガレントの奴だったんだよ」


 「そういやよく似てたな?」


 「そうか? 俺は『鋼鉄の鎧騎士』なんて詳しくないからな」


 『あいつら自前で『鋼鉄の鎧騎士』を作ったとか言っていたが結局はガレントの機体を何処からか持ってきたんだろう?』

 

 この世界で一番最初に「鋼鉄の鎧騎士」を使い始めたのはガレント王国だと聞く。

 それは既に三百年近く前の話。


 高価な「鋼鉄の鎧騎士」でも旧型になる物は出力も何もガタ落ちで、現行機種に比べて劣るので中古として世に出回る。

 それをもとに研究材料として各国が手に入れ解析をする。

 だが完全に解析しきれなければイザンカの様にスピードは出るが機体が軽くなってしまい力が弱く、一撃離脱くらいにしか使えない代物になってしまう。


 ガレントの「鋼鉄の鎧騎士」はお手本として世に増えるが、劣化コピーの様なものばかりでその性能に差が出る。

 

 だからジュメルとか言う連中もガレントの機体を何処からか仕入れてきたのだろう。

 何処まで解析出来たかは知らないがガレントの量産型でも「鋼鉄の鎧騎士」が強力な理由はそこにある。

 

 「うーん、そうなのかもしれないがな。何か引っかかるんだよ」


 俺の「鋼鉄の鎧騎士」にしがみついているオクツマートはそんな事を言っていた。

 


 この道を西に向かえばエルフの森にたどり着く。そこから森の外側を伝って北に向かえば貿易都市サフェリナに着くとの事だ。

 普通に歩いて行くならかなり時間が必要だが、「鋼鉄の鎧騎士」の足ならば馬車より早い。

 そんな事を思いながら道を進んでいる。 


 「アイン!」


 ベリアルがいきなり警告の声を上げる。

 その声に立ち止まりベリアルが指さす方へと目を向けると遠くの街道を軍隊らしき連中が移動している?

 もうすぐ暗くなると言うのに?



 「もしかしてガレント軍か!?」


 『だとしたら千載一遇のチャンス!』




 俺たちはすぐにその軍隊の近くに忍び寄るのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る