第66話第十三章13-2ルシフル強襲
13-2ルシフル強襲
ロバートの話ではルシフルの港町は表上は普通の港町を装ってはいるがその実は地下組織である秘密結社ジュメルとか言う連中らしい。
その港町に俺たちは夜を待って入港をする。
「時期的にゼッテンが魔鉱石を運ぶ頃になっている。だから俺たちの船が正面から入って行っても怪しまれずに済むだろう」
港が近づく前に俺たちは段取りを話し合った。
こちらの戦力は俺の「鋼鉄の鎧騎士」とオクツマートたちを含め水夫たちで全部で十八人。
対してあちらは話上では魔導士や「鋼鉄の鎧騎士」を作る連中を含め二百人くらいらしい。
数では負けているが強襲で三体いると言われている「鋼鉄の鎧騎士」を倒し、魔導士たちを制圧できればルシフルの港町は制圧できる。
どちらにせよ「鋼鉄の鎧騎士」を倒すことが出来れば魔導士たちは俺の「鋼鉄の鎧騎士」に立ち向かう事は出来くなる。
「アイン、そうは言ってもお前さんの装甲はあの中古品だぞ? 魔導士たちの攻撃に耐えられるのか?」
オクツマートが心配そうに聞いてくる。
しかし俺にも打算がある。
「今まで通りにはいかないだろうな。しかし連中だって知っているだろう、『鋼鉄の鎧騎士』の対魔処理については。だから連中が魔法攻撃を仕掛ける前に魔導士たちも俺の『鋼鉄の鎧騎士』であらかた倒してしまい投降させるのさ」
多分素体自体も強力な物らしいから問題は無いだろう。
それに当たらなければどんな魔法でも意味がない。
俺の「鋼鉄の鎧騎士」は普通のではないのだから。
「見えて来たぞ。話した通り『鋼鉄の鎧騎士』は皆と奥の一番大きな建物の中のはずだ」
「分かった、オクツマート後は頼むぞ!」
「ああ、分かった」
俺とオクツマートは拳をぶつけ合い持ち場へと移る。
俺はすぐにシートの下に隠してる「鋼鉄の鎧騎士」に乗り込む。
「さてと、パーティーの始まりだ!」
俺はそう言って「鋼鉄の鎧騎士」からの外部の状況を確認する。
「鋼鉄の鎧騎士」で見えるその先には向こうの港の灯台の光が見える。
そして程無く魔法の明かりで接岸を促す指示が出た様だ。
外部音声を拾うとだいぶ近づいたようでロバートたちが港に接岸をする準備で慌ただしくなっている。
そして程無く船に接岸による揺れを感じた。
「アイン! 良いぞ!!」
オクツマートのその叫び声に俺は答え一気にかぶっていたシートを弾かせ船着き場に躍り出る。
完全に油断していたのだろう、俺の「鋼鉄の鎧騎士」が飛び出てここの連中は動きが固まった。
そしてわずかに遅れて初めて事態を把握する。
「て、敵襲だぁッ!!!!」
「『鋼鉄の鎧騎士』だと!? ゼッテンどう言う事だ!?」
「早くこちらも『鋼鉄の鎧騎士』を出せっ!!」
口々に港に集まっていた連中は叫ぶが俺の「鋼鉄の鎧騎士」の方が動きが早かった。
ロバートに教えられた通りこの港町で一番大きな建物に俺は大剣を振り回しながら駆けていく。
「どこの『鋼鉄の鎧騎士』だ!? まさかガレントか!!!?」
『死にたくなければ大人しくしろ!』
大きな建物前に出た俺はその扉の前で立ち塞がる男にそう言う。
しかしその男は俺の「鋼鉄の鎧騎士」を見ても逃げる事無く上着を脱ぎ去る。
「くそっ! 早く『鋼鉄の鎧騎士』を立ち上げろ!! 時間を稼ぐ!!」
そう言ってその男はみるみる体を膨らませその姿を変えていく!?
『なんだと!? どう言う事だ!?』
「敵わなくても時間くらい稼げる! 我がジュメルは偉大なり!!」
そう言ってその男は完全に狼男のようになった。
『まさかワーウルフか!?』
「俺は秘密結社ジュメルの魔怪人、ネロだ! 貴様、どこの誰だ!?」
そう言いながらそのワーウルフは俺の「鋼鉄の鎧騎士」に飛び掛かって来た。
しかしどんなバケモノでも「鋼鉄の鎧騎士」に敵うはずもない。
爪を立て怪力で殴りかかって来ても中古の外装すら貫けない。
『命を粗末にしやがって!』
何度かその攻撃を受けたが俺はワーウルフが大きく拳を振り上げた瞬間に横に動き大剣を振る。
俺の動きがあまりにも早く相手のワーウルフは俺が目の前から消えたかのように感じた事だろう。
打ち込んだ拳が空を切る。
そして俺の姿が横にいる事に気付いた瞬間俺の大剣で叩き潰された。
びしゃっ!
剣を振り抜き俺はそのまま大きな建物に飛び込む。
ドガァシャァーンっ!
すぐさま剣を構え中の様子を確認する。
すると「鋼鉄の鎧騎士」が全部で四体。
うち一つは制作中だろうか?
他の三体が胸の扉を閉めて動き出した。
しかしもう遅い!
『死にたくなければ大人しくしろ! それからすぐに降りろ!!』
しかし三体の「鋼鉄の鎧騎士」は俺の忠告を無視して動き出す。
仕方なくすぐさま一番近い一体の首をはねる。
ざんっ!
だが他の二体は近くに有った剣や鉄の棒を振りかざし俺を攻撃してくる。
『遅いんだよ!』
残り二体の動きがスローモーションのように見える。
俺は魂の奥からくる力を解放して俺の「鋼鉄の鎧騎士」を動かす。
その動きは稲妻の如し。
すぐさま相手の横に飛び退きそこから強烈な一撃を放つ。
ずぶっ!
突き出した大剣は相手の鋼鉄の鎧騎士の腹部を貫く。
そして突き出た剣先には真っ赤な血のりが着いていた。
俺はその「鋼鉄の鎧騎士」に刺さった剣を引き抜きながら蹴り飛ばしそのまま隣の鋼鉄の鎧騎士に次の攻撃を入れる。
大剣を袈裟切りに振ると相手の「鋼鉄の鎧騎士」は何と装備した盾でその一撃を防げた。
がいぃぃいいいいぃぃんっ!
『何!? だが!!』
まるでオリジナルの外装に剣を叩き込んだような感じだったが俺はすぐさま空いた左手で相手の頭を鷲掴みにする。
そしてそのまま壁まで押し倒す。
ぐしゃ!
俺の「鋼鉄の鎧騎士」が相手の「鋼鉄の鎧騎士」の頭を握りつぶした。
握りつぶした頭からは人間の様に緑色の液体が流れ出すがこいつはまだあがいていた。
仕方なく俺はその胸に剣と突き立てる。
ぐさっ!
持っている盾とは違いこいつの外装に俺の剣は易々と突き刺さっていまった。
『なんだ? 盾だけ特別か!? ぐっ!?』
易々と突き刺さる剣に俺が驚きを示していると後ろから攻撃を受けた!?
振り向けば最初に頭を切り落としたあの「鋼鉄の鎧騎士」だ。
『こいつまだ動くか!? だが!』
俺は突き刺さった剣を引き抜き後ろから攻撃してきた「鋼鉄の鎧騎士」を切り伏せる。
振った俺の大剣はあっさりと相手の「鋼鉄の鎧騎士」を袈裟切りに切り裂き葬る。
こいつら、下手したらガレントの「鋼鉄の鎧騎士」より強いかもしれない。
それをこんな港町のでひっそりと作り上げるとは。
俺は周りを見渡す。
そして最後の一機が台の上に座ったままな事に気付く。
他の「鋼鉄の鎧騎士」と違い前進が黒く塗られていた機体だった。
すぐに剣を向け近づくが胸の扉が開いたままだ。
どうやら動くことは無い様だ。
『よし、お前らの【鋼鉄の鎧騎士】は全て倒した。大人しくすれば命までは取らん。全員建物の真ん中に集まれ!』
俺がそう言うと魔導士らしき連中を中心に数名が両手を上げて出てきた。
ドーンっ!
外ではオクツマートたちが爆弾を使っている様だ。
俺は遅れてやって来たロバートたちの仲間にこいつらを捕らえさせてすぐに外に出る。
そして爆弾によって炎を上げている港町の様子を見る。
『大人しくしろ! お前たちの【鋼鉄の鎧騎士】は全て倒した!! 死にたくなければ俺たちに投降しろ!!』
そう言いながら近くで魔法攻撃をして来た魔導士に剣を振り下ろす。
その様子を見た他の魔導士やあのワーウルフの様な奴等は攻撃の手を止めた。
「貴様ら一体何者だ?」
どうやら代表者らしい奴が出てきた。
『大人しくしてもらおうか。大人しくすれば命までは取らんさ』
俺のその言葉にその男は持っていた魔術師の杖を放り投げる。
「分かった。降参する‥‥‥」
その様子を見ていたロバートやオクツマートは歓声を上げたのだった。
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