第25話第五章5-2ホリゾン軍
5-2ホリゾン軍
俺たちが着いたノージム大陸の場所はあの激戦を繰り広げたヘミュンの街近くだったようだ。
ヘミュンの街はエダーの港町と首都エリモアの間にある街だ。
そして非常にまずいのがホリゾン軍の後方支援部隊がサボの港町に渡る為にヘミュンからエダーの港町にたくさん待機しているという事だ。
中には新型の「鋼鉄の鎧騎士」もたくさんいる。
いくら俺の「鋼鉄の鎧騎士」が優秀であったとしても流石に多勢に無勢、勝てる見込みなどない。
それに可能な限り面倒事は避けたい。
なのでこっそりと一早くモルンの街やルド王国方面に逃げさらにその向こうのイージム大陸へと渡りたい。
だから俺たちは昼は物陰に隠れ休み、夜になるごとにこっそりと東を目指した。
* * *
「アイン、ちょとまて! あの先にホリゾン軍ぽいのがいるぞ?」
『何処だ?』
暗闇の中俺たちは今日も東を目指していた。
しかし肩の辺に座って周りを見ていたベリアルが警告を発する。
俺たちはすぐに「鋼鉄の鎧騎士」を止め、ベリアルの言う方向を見る。
すると確かに軍のような連中の野営がいた。
「こんな所にホリゾン軍だと? こっちは東側でガレントが攻めてきている西じゃないぞ?」
「戦力を集める為にルド王国からの軍隊も引っ張って来たのか?」
ルド王国にも軍隊はいる。
そしてホリゾンの新型の「鋼鉄の鎧騎士」はルド王国製だ。
あそこにはその昔ホリゾン公国が帝国時の研究施設が残っているらしく、兵器開発などもいまだに細々と続けられているらしい。
それにあの国には化け物がいるという噂もあり実際には周りの村も含めホリゾン公国以外交易が無い状態だった。
『オクツマート、むこうに【鋼鉄の鎧騎士】はいるのか?』
俺は思わずそう聞いてしまった。
一番厄介なのはやはり同じ「鋼鉄の鎧騎士」だからだ。
「多分いるだろうな。どうやら出来上がった『鋼鉄の鎧騎士』を運んでいる最中のようだ。大きな荷台が二つ‥‥‥ いや、三つだ。多分新型を三体運んでいる最中だ!」
『三つか‥‥‥』
俺はふと思う。
この先無事闇夜に隠れて東に逃げ切れるかどうか。
「おい、アインまさか‥‥‥」
『動いていない【鋼鉄の鎧騎士】ならたとえ新型でも簡単に倒せる。この辺で騒ぎを起こして【鋼鉄の鎧騎士】を撃破しておけばいろいろと足止めになりそうだ』
俺はそう言って三人を降ろす。
そして長剣を引き抜き俺はゆっくりと野営している軍隊を見る。
『このまま行けばモルンの街付近まで行ける。俺があの輸送隊ををつぶして来る!』
「アイン! 無茶するなよ!!」
『分かっている、お前たちは向こうの丘まで先に逃げていてくれ。奴等を叩いたら俺もすぐ行く!』
そう言って俺は一気にホリゾンのその部隊に突っ込んでいく。
流石に見張りの兵がいたのだろう、大地を揺らし走りくる俺の「鋼鉄の鎧騎士」に気付いたようだ。
「て、敵襲ぅっ!」
大声をあげて仲間たちを叩き起こす。
しかしもう遅い。
俺は大剣を大きな積み荷に突き刺す。
そして切り裂いた布の所からやはり新型の「鋼鉄の鎧騎士」が見えた。
あの「巨人」を投入する前にガレント軍の「鋼鉄の鎧騎士」を圧倒したやつだ。
『やはりか! だが!!』
俺は動かなくなるようにもう一度剣を突き刺してから次の「鋼鉄の鎧騎士」を叩き潰そうとした。
がいぃんっ!
しかし振られた俺の大剣は狙った「鋼鉄の鎧騎士」に当たる前に横から伸び出た剣によって防がれた。
『ちっ! もう起動したか!! だが!』
素早い動きで相手を圧倒する俺の「鋼鉄の鎧騎士」にいくら新型でもついて来れない。
そしてこいつにもとどめを刺そうとした時だった!
「アインっッ!!!!」
俺の背中にぞくりとした憎悪が流れた。
この声、聞き間違いない!
俺は相手の「鋼鉄の鎧騎士」がいるにもかかわらずその声の主を探す。
忘れもしない、あの声はバッカスの野郎だ!
俺たち傭兵部隊の隊長をして俺たちに「死ぬな、生きて帰ってこい」とか言いながら俺を悪魔の手先として軍に売り払った野郎だ!
『バッカス! 貴様何故ここにいる!?』
「貴様のお陰だよ! お前を逃してしまった責を問われ今では支援部隊にお払い箱だ! それより何故お前がここにいる? ガレントに逃げ込んだんじゃないのか!?」
がきぃぃいいぃぃんっ!
俺が会話に気をとられていると思ってホリゾンの新型「鋼鉄の鎧騎士」が襲ってくるがそんな生易しい攻撃など通用しない。
左手に装備されている小型のラウンドシールドでその攻撃を跳ね返しその首を斬り飛ばす。
やられた「鋼鉄の鎧騎士」はその場で両ひざをつき動かなくなった。
残りあと一つ!
しかし今はバッカスの野郎を仕留めたい。
あいつのお陰で俺たちがどれだけ苦労したか。
『出て来いバッカス!!』
「俺はもうここにいるぞ?」
聞こえてきたのは後ろだった。
俺は振り向きざまに大剣をバッカスの野郎に叩き込もうとした。
がっ!
『何っ!?』
「わっぱが力を得たからと言ってはしゃぎすぎるな。愚か者が!!」
すたっ!
俺の「鋼鉄の鎧騎士」の肩に一人の女性が降り立つ。
銀色の髪の毛を振りながら褐色の肌を惜しみなく露出し大きな胸を揺らしながらすくっと立ち上がる。
こんな状況だというのにその姿に一瞬見とれてしまうほどの美人、そうダークエルフのザシャだった。
「少し大人しくするがいい!」
そう言って手を振ると近くの木々からツタが伸びてきて俺の「鋼鉄の鎧騎士」に絡み付く。
『くそっ!』
俺の「鋼鉄の鎧騎士」は身動きを封じられるのだった。
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