第3話第一章1-2最前線
1-2最前線
「不甲斐ない。『鋼鉄の鎧騎士』一騎くらい落とせぬものか?」
金ぴかの鎧に身を包んだ将軍様が丘の上にある本陣で対峙するガレント軍を睨みつけながらふんぞり返って文句を言っている。
傭兵部隊含め前衛の部隊の死者約二百名。
特に俺たち傭兵部隊は悲惨なものだ。
命からがら逃げだし辿り着いたら指揮官はこの通り叱責を受けている。
俺は丘向こうに展開して前線を止めたガレント軍を見る。
「鋼鉄の鎧騎士」がここから見えるだけで六体もいやがる。
あれを倒すのなら最低でも一つにつき五百人くらいで攻めなければ歯が立たない。
それも魔法使いの援護があっての話だ。
「ガレントのあの前線を何とかせんか! あそこが崩れさえすれば我が国の最新鋭である『鋼鉄の鎧騎士』が投入できる! 貴様ら真剣にやらんか!!」
そう言いながら将軍様は指揮官に蹴りを入れた。
俺たちホリゾン公国は世界最大の支配国家であるガレント王国に独立戦争を仕掛けた。
戦争が始まって既に半年。
その間に公国中の傭兵や奴隷戦士たちが集められこうして最前線に送られている。
「し、しかしゾルダ将軍、あちらには『鋼鉄の鎧騎士』が六体もいます。我らだけでは‥‥‥」
「ええぇぃいっ! 分かっておるわ! 我が方はあの前線さえ叩ければ奥の手があるのだ! 古の「巨人」の卵がな!!」
聞き慣れないその名前に指揮官も俺たちも目を向ける。
古の「巨人」の卵だと?
なんだそれは?
ホリゾン公国の技術開発部が新兵器でも開発したのか?
「よいか、あの前線を崩し我が軍の『鋼鉄の鎧騎士』を送りこむのだ! そして戦線が崩れた所で奥の手、『巨人』の卵を投下する! 見ておれよガレントの犬ども!!」
将軍はそうまくしたてるがそれがどれだけ困難な事かは誰だってわかっている。
集められた兵士たちは口々に小声で文句を言う。
「ちっ、対戦車ロケットランチャーでもありゃぁ何とかなるモノを‥‥‥」
俺はそう言ってからハタと気付く。
対戦車ロケットランチャー?
なんだそれは?
いや、この記憶にあるものは‥‥‥
「おいアイン、何だその対戦車ろけっと何とかってのは? 確かにガレントも重戦車が出てるがそれより『鋼鉄の鎧騎士』だろ?」
隣で将軍たちの話を聞いていた仲間のベニルが怪訝そうな顔して覗き込んできた。
この世界の「戦車」は馬に引かせた車を指す。
俺の記憶にあるキャタピラがついて大砲があるものとは違う。
いったいこれは‥‥‥
「よいか、夕暮れになる時に奇襲をかける! 貴様らはその先陣を切れ! むこうの『鋼鉄の鎧騎士』の一角でも崩れればそこへ我が軍の最新鋭機を投入し、崩れた所に追い打ちで『巨人』の卵を投下する! これで奴等はしまいだ!!」
その「巨人」の卵とか言うのが何かは分からんがこの状況を覆させるほどのモノなのだろう。
俺たちは指揮官に言われ各々が生き残る為に準備を整えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます