強がりな女の子

 よく見ると彼女は、今にも泣きそうな表情をしていて、それを必死に抑えていた。

 今にも泣きそうな顔……だが、彼女は泣くわけにはいかない。

 強く生きると決めたから……先程の宣言、それはマックハート家という籠から出る為の言葉だ。

 どの創作においても貴族というのは しがらみが強い。

 というか、上の階級の者は盗賊や国家反逆は別だが、基本的に国に逆らう事は不可能なのだ。

 何故ならその世界を運営し、作り上げているのはいつだって上の者だからだ。

 逆らえば、這い上がれないどころか下手すると処刑されかねない。 

 誰でも命は惜しい。

 弱肉強食……市民は血となり肉となり働き、貴族や王族はそれを喰う。

 弱きものは強き者に食われる。

 ならば強くなる側になるしかないのだ。


「セシアの判断は正しいと思うよ」


 彼女の判断も、また正しい……。

 今回はたまたまうまくいっただけで、本当ならどうしようもなくクレアに処理されていただろう。

 

「正しくなんかないわよ!!」

「セシアの判断も正しいよ……今回だって誰も傷つかなかっただけで、もし僕や君……他の仲間が傷ついたのなら、僕はきっとウェルサを助けたことを後悔したと思う」


 僕は汚い言い方だが、人間に後悔などない。

 選択にはほとんどの場合、後悔が生まれる。

 今回は誰も傷つかず、ウェルサを救出できた。

 その選択肢に後悔はないのだから、彼女が傷つく必要はないのだ。

 

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