正妻戦争?

「それで? その子は誰との娘じゃ?」

「私、彼のお嫁さん」


 謝り倒して横目で見てくる彼女にルナはそう言い放つ。

 その場で皆、凍ったように固まった。


「ティオ、このおばさんとはどういう関係?」


 その言葉にサリスは凍りが解けるかの如く燃え上がった感じがした。

 っていうかさっきまでサリスお姉ちゃんって言ってたのにな~。

 完全に幼女と美女のティオレの取り合いだ。

 見た目は完全に和やかな感じなのに、言葉が修羅場だった。


「ルナちゃん、私はまだおばさんって歳じゃ……」

「いやいや、もうすぐ三十だからおば……!!」


 ウオラが笑いを堪えて、そんなことを言うと案の定ミリーに殴られる。

 わが父ながら、本当に空気が読めないな。


「口が悪いぞ、ルナ」


 ティオレの言葉にムスッとしてソッポを向く。


「すまんなサリス」

「いや、いい……それより話してくれるか?」

「ここじゃなんだ、後日話させてくれ」

「……わかった」

 

 真剣なティオレの顔に何かを察したのか、サリスは頷いた。


「今度は逃げずにちゃんと話すんじゃぞ」

「おう、任せとけ」

「逢引きするの?」

「お前、少し見ない間にどこでそんなこと覚えた……」

「貴方がおいてった孤児院なんだけど?」


 その瞬間、何も言えなくなる。


「それじゃあサリス、俺は用事があるから行くよ……ほら、ルナも行くぞ」


 そう言って彼女を抱えるとそそくさと逃げるようにこの場を後にした。



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