セシア・マックハートとして

「手伝ってもらえますか?」


 彼は手を前に差し出す。

 思えば彼はいつでも自由奔放だった。

 やりたいことに全力でやりたくないことからは全力で逃げる。

 その性格が私は羨ましかった。


 私は二度救われた。

 一度目は学院退学、二度目は今回。

 最も嫌う性格の奴に二度も救われるなんて思ってもみなかった。

 普段ならぶっ飛ばしているところだが、今回は彼の自由奔放さに救われた気がする。


 仕方ない、本当に仕方なしに手伝うだけなんだから……。

 

 内心そう言い聞かせ、私は彼を見る。

 彼の目には一切の迷いがなかった。

 本気で兄を救い出すつもりの目をしていた。


 私は思わず彼の手を取ってしまった。

 どうせ取るつもりだったが、少し照れ臭く戸惑っていた私の身体はいとも簡単に動き、彼の手とった。

 

「じゃあ、きまり!!」


 こんな状況なのに、彼の笑顔見て鼓動が早くなり、顔が熱くなっていく。


「大丈夫そう?」

「え、えぇ……大丈夫よ!」


 切り替えろ、今回の戦いは遊びじゃない。

 深呼吸をして何とか沈める。


「そろそろ俺もあと二分が限界だ」


 ファリオスの顔に汗がにじむ。

 怒涛の攻撃で彼にも限界が来る。

 

「さぁ、皆で生きて帰りましょう!!」


 そう言うと、私を含め皆が声を上げ、兄ウェルサの無力化作戦が幕を開けた。



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