79話 初試験

 各自指定された場所にて試験が行われていた。

 この試験では各地から結界を張れる冒険者などが訪れ、校内あらゆる場所が試験会場となる。

 僕はある大教室で行われた。

 

「では、試験を始める…名前を呼ばれたもの前へ……」


 そう言って次々と名前が呼ばれ、魔法を披露する。

 一人終わると教官が風魔法で陰を払う。


「次、ウェルサ・マックハート」

 

 ウェルサか……。

 ここ半年妨害工作などはなく特に交流もなかったので関わる事がなかった。


「黒煙」


 呪文を唱えると一気に魔力が放出される。

 黒い煙が周りを包み、教官が風魔法で薙ぎ払う。


「……よし、次……」


 教官の表情はどこか違和感を持った感じだった。

 普通魔法は漏れ出すものだが、彼の魔法はどちらかというと無理矢理放出と言ったかんじだった。

 ウェルサは僕の方を見ると鼻で笑い去っていく……嫌味な性格は相変わらずのようだ。


「次、サウル・ラット」

「はい」


 冒険者カードを見せる。

 替え玉受験対策だ。


「では始めろ」


 身体の魔力を巡らせ、唱える。


「黒煙」


 黒い煙が身体を包み、周りを少しづつ黒い煙に染め上げていく。

 周りが染まったところで魔法を解く。

 しばらくして教官が風魔法で薙ぎ払い試験は終了となった。

 試験が終わった順番に外に出て帰宅となるのだが……。


「なんだあの魔法?」


 外でウェルサが声をかけてきた。


「黒煙ですが?」


 そういうと、大声で馬鹿にしたように笑うウェルサ。


「あれが黒煙? 笑わせるなよ、その程度が次席とは笑えるな」


 そう馬鹿にするウェルサと話しているのも不快だったので無視して歩こうとする。


「待てよ、まだ話してるだろ?」


 僕の手を掴んできた。

 手を振り払い、


「僕もう行かないと行けないんで……」


 そう言って歩いていく。

 その間も何か言っていたが、無視して歩いていく。

 皆と決めた集合場所へ向かう。


「遅〜い!」


 集合場所に着くと皆もう集合していた。


「すみません、最後の方だったので……」

「皆、無事試験終わったみたいね……それじゃあミリスの食堂でお疲れ会しましょう」

「終わった、お疲れ様……うぅ……」


 ミリスが絶望な顔をしていう。

 僕はオットーの元へ向かう。


「そんなにダメだったの?」

「いや、むしろ今までより良かったけど、コロナって非常に自己評価が低いんだ……」

「あ〜」


 そう話しているとコロナがまたセシアに説教を受けるのだった。

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