67話 目的

「さて、どうしてセシアちゃんを尾行してたのかしら?」


 少し歩いてミリーに聞かれたので説明した。

 食堂を出る時の彼女が放って置けなかったと話す。


「はぁ、このお節介は誰に似たのかしらね……」

「ミリーじゃないのか?」

「まぁ、いいわ……サウル、恐らくだけどセシアちゃんはお見合いだと思うわ」

「お見合い?」

「えぇ、私もそうだったもの」


 ミリーも貴族だっけか……。

 聞けば、彼女もあのぐらいの歳にお見合いや婚約をしていたらしい。

 しかも婚約相手はあのレイスだそうだ。


「何で父さんと……」

「あら、この人の方がいいと思ったからじゃない……それに、ウオラと一緒じゃなければ貴方は生まれてなかったのよ?」


 それにしたってあんな優良株逃すか?

 向こうだって本気で争ったのだし、好意はあったはずだ。

 理屈じゃないってことか……。

 

「多分今回のセシアちゃんのお見合い相手は恐らく……」

「誰か知ってるんですか!?」

「情報だと、レイスとお見合いと聞いてるわ」

「………は?」

「まぁ、あの様子じゃ彼、まだ当分婚約する気は無いでしょうけど」


 それだけで彼女があんな顔するだろうか?

 セシアはどんな厳しい状況でも諦めない強い子だ。

 しかし、あの時の彼女は完全に諦めた顔をしていた。


「やっぱり僕……」

 

 僕に何が出来るって言うんだ……部外者で家族間の話だ。

 口を出していいことじゃ無い……だけど!

 セシアの歩いていった方を見ながら考えていると、


「「迷うな(迷わず)、行ってこい(行きなさい)!」」


 トンっと両肩を押される。


「場所はその先左にあるフルールという店よ」


 振り返ると両親が笑顔で言う。

 何が出来るかなんて、僕にはわからない……だけど、放っておけない。

 烏滸がましいのはわかってる……これは完全に僕の自己満であるとも……。

 両親に背を向け、セシアを追いかける。

 

「セシア!」

「?」

 

 振り返る彼女はどこか元気がなさそうな感じだったが、直ぐにいつものように高圧的になる。


「何よ、ここまできてストーカーかしら?」

「聞きたいことがあって……その、この後の用事ってお見合いかな?」

「どうしてそれを……」

「もしかして、相手は王族のレイスさんじゃない?」

「それがどうしたのよ……貴方には関係ないでしょ……」

「えぇ、それがただのお見合いでしたら……」


 その瞬間、セシアの顔が少し曇った。

 

「何かあるんですね……」

「うるっさいわよ……何もできないくせに偉そうに……何様よ」


 その声はいつもと違い、とても弱々しく聞こえた。


「私はもう行くから……」

「待ってください……」

「離して!」


 僕がセシアの腕を掴むと、振りほどかれる。

 振り解いて見えた彼女の目は泣きそうになっていた。


「放っておいて! 次来たら、ボコボコにしてやるから!」

「放っておけません!」

「どうしてそこまで……」

「そんな顔してる友達を放っておけませんよ……」


 そう言うと、彼女の綺麗な瞳から大粒の涙がこぼれ落ちその場にヘタレ混むのだった。

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