第8話

 魚ゴーレムと視界を共有して川を進む。

 異世界と言ってもそうそう川にまで変なのは居ないのか?


 ………と思ったら深い所にはあの魚頭のお仲間がいた、他にも魚に手足が生えたヤツとかもいるな。

 ここら辺は流石は異世界って感じだな。


 しかし特に襲って来ることもないので魚ゴーレムは悠々と泳いでいく。

 けど魚頭みたいなモンスターがこんな川にまで出て来るんじゃ異世界の人間は川にすら近づかない可能性もあるかもな。


 俺が生前のモブなら絶対に近く事はしないと断言出来る。ゴーレムで対処出来たから少しは冷静でいられたがあの不気味な見た目のヤツが川から現れたらパニック状態になるかも知れない。


 リザードマンだって普通に怖かった、何を当たり前に武器でこちらを襲おうとしてんだよ意味分からんって内心なってたしな。


 この世界……人間いるよな?

 異世界ラノベなら人間もエルフも普通にいるもんだが、いっいや俺はテンプレを信じるぞ。


 こんな化け物だらけの世界でも人間は居るしエルフもいる。魔法もあるし冒険者とかもいる。

 そう思わんとやってられない。


「……!」


 魚ゴーレムが泳いで進む、川から頭を少し出す。

 視界の先には大きな何かが見えた。

 それは人工的に作られた城壁の様な高い壁だ、川からそれなり離れているがそれでもハッキリとその存在を確認出来た。


 多分あれは城塞都市ってヤツだ、異世界ラノベにはよく出てくる。

 自治権を持つ貴族とかが領主となって治めてる街か何かじゃないだろうか、少なくとも盗賊とか類のアジトとかって規模ではないと思う。


 人口は少なくとも数千人は住んでいるんじゃないか? まあ直接見に行かんと何とも言えんけど。

 街はあった、後は住んでるのが人間なのかどうかだな……まさかリザードマンとかじゃないだろうな?


 流石に魚ゴーレムに手足を生やして城塞都市に歩いて向かわせる事は出来ないし、やっぱ俺が行くしかないよな。


 もしもヤバイ連中がいても、そん時はゴーレムを頼りに何とか逃げれば良いだろう。

 俺は城塞都市に向かう事にした。


「さてっそれじゃあ守りを固めたものの、この住処を処分するか」


 残してもいいのだが、なんとなく立つ鳥跡を濁さず的な事を考えての行動だ。


 ハウスゴーレムと魚ゴーレムは土に戻す、川に沿って歩けば直ぐに城塞都市が見えてくるだろう。

 無論少し川から離れて進むけどな、魚頭にまた襲われたら嫌だし。


 リザードマンゴーレム達に荷物を持たせて出発である。


「よぉしっそれじゃあ出発だーー!」


「「「「「「…………………」」」」」」


 本当にみんなずっと無言なので少し寂しいであります。ロンリーチビエルフ。



 ◇◇◇◇◇◇



 俺を中心に回りをリザードマンゴーレムと魚頭ゴーレムで囲む、危険なモンスターがいつもヒョッコリと出て来るん場所なので俺自身も常に警戒は怠らない。


 歩くのって疲れる、乗り物になりそうなゴーレムとか作れないのか。

 車は……流石に無理かな、試してもいないので何とも言えないが。


 どのみち下手に目立つとどうせモンスターに襲われる可能性が高くなるので辞めといた方が良いよな、今は徒歩で我慢するしかない。


 むしろ荷物持ちをリザードマンゴーレムがしてくれるだけありがたい話だ、このチビエルフの身体が本当にあのキャラクターシートに書いた様な億越えのステータス持ちなのかも未だに試していない。


 万が一見た目通りの貧弱ステータスだったらと思うとステゴロでモンスターに喧嘩を売ろうなんて真似は出来ないんだよ、そこら辺まだビビってる俺だ。


「おっあれは!」


 やがて見えてくる城塞都市、文明の気配に内心ではホッとしてる。やっぱりリアルサバイバルとかキャンプすら未経験の俺にはキツかった。


「よしっ異世界発の街に乗り込むか……あっ」


 そういやこのゴーレム達……どうしょう。

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