第29話 謎のゾーオ

 相澤の変身を待った後、俺達は電柱沿いにゾーオを追うことに──。


「所々だが、結構やられちゃってるな……」

「うん、この様子だと直すのにも時間が掛かりそうだね……」

 

 ゾーオが通過したであろう電線の上は、所々断線しており、地面に横たわっている。

 それと同じくして、停電の被害は次々に広がっているようだ。


「これ以上被害を増やすのは不味いよな。見つけ次第結界を張るぞ!」


 暗がりでも見える俺が、相澤を先導するように飛行する。

 皮肉な話だが、こんな時だけは猫の姿で良かったと思ってしまう。


 しばらく飛び、遥か前方。

 変電施設から伸びる電線沿いに、斜め上へ登って行ったその先で、黒い靄はその場に停滞していた。

 

「見えた、相澤このまま真っ直ぐだ! ゾーオはあの鉄塔の上にいる」


 俺は速度を落とし、相澤の隣に並んだ。

 そして飛びながら彼女に向かい手を差し出すと、俺の意図に気付いたか相澤は手を取った。


「行くよ、ノアちゃん。コネクト!!」


 俺達の間に、バイパスが繋がった。

 彼女の右手の小指から伸びた一本の赤い線を伝って、魔力の熱が俺のしている首輪に──そして体へと流れ込む。


「結界の範囲内に入った、今だ相澤!」

「うん、結界魔法アジーーール!!」


 俺の手から、放射状に光が放たれる。

 光によって現実の色味が押し退けられ、淡い色の魔法世界が顔を覗かせた。

 同時に、本来見えるはずのない化け物も共に……。


「な、なんだ、アレは?」

「えーっと、足が生えたナマズ……っぽくも見えるけど」


 相澤の言うように、高さ三十メートル程の鉄塔の上に居座っているのはナマズのようなゾーオだった。

 しかし一般的なナマズとは違い、質量が圧倒的に大きい。

 それに知識にあるナマズとは違い、どこか全体的におどろおどろしく見える。


「相澤、油断するなよ。相手がどんな能力を使って攻撃してくるか分からない、建物を死角にしてって……」


 相澤に指示を出している最中だ。

 ゾーオの巨大な目玉がギロッと動き、俺達を見つめる。


「こっちに気付いたか。早々に決めるぞ、相澤!」

「でもノアちゃん、ゾーオの様子がおかしいよ!?」


 ゾーオの体に、バチバチと静電気のような光が映る。

 いや──静電気なんてもんじゃない!

 それ次第に明るく、大きな電光へと姿を変えた。

 そして、瞬く間に、


「──なッ!?」


 鉄塔の上に居るゾーオが眩く輝く。

 ヤツの体から、一筋の稲光が俺達に向け降り注いだ……。

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