靴下片方のスタートライン
散らかった部屋の中を少しずつ片付けることにした。
雑然と物が積まれている部屋の隅に向き合い、要る物と要らない物をより分ける。私の中で「要らない」と判断した瞬間に、「いつか使うかもしれない」「自分のところに来たものだから縁があるに違いない」と思って心理的抵抗感が生まれてしまう、「要らない=使わない」と定義して、じゃんじゃんゴミ袋に放り込むことにした。1年使ってないものはもう使わないだろう……と弱気になりつつも、なんとゴミ袋1つ分のゴミが生まれた。快挙だ。
続いて服。我が家の服の収納は破綻しているので、「片付ける」よりも、とにかく総量を減らすことを心掛ける。もう着ない服は鬼の心でゴミ袋に突っ込む。メルカリに出せるようなご大層な服は持っていないので、シンプルに「着るか、着ないか」。これもゴミ袋1つ分。
片方だけの靴下がなぜか現れている。もう片方はどこに行った。50歳まで残り49日、半世紀へ向かう旅の2日目は、“片方だけの靴下”に象徴されているような気がした。
お気に入りのポッドキャストを聞きながら無心に服を仕分け、たたみ直す。片方だけの靴下は役割を失って不完全に見える一方で、片付けに着手した証でもあるように思う。とりあえず、雑巾に再利用するのはいったん保留にして、服の隅に追いやっておく。
その後もちまちまと要らないものを拾い出し、トータルでゴミ袋3つ分になった。これだけ減っても、まだ部屋の様子が変わった気配はない。これだけ捨てても、私は昨日の私とあまり変わっているようには思えない。達成感の代わりに、次の攻略すべきステージがぼんやり光っているように見える。
結局見つからなかった片方の靴下の代わりに、だいぶ前に買った初代の「DJI Osmo Pocket」を発掘した。「汚部屋」の様子を動画に撮る勇気はなかったが、念のため、とりあえず充電だけはしておく。いつか部屋を動画に撮る機会は生まれるのだろうか。部屋の隅々まで光を当てる作業はまだ始まったばかりなのだ。
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