壊滅的にパーティ需要のないアサシンの俺と組んだ魔法使い(♀)は地獄のようなステータスをしていた

ぽぽぽんすぽ

Season 1. 地獄のクソPT編

1. アサシンに人権なんて1ミリもないって言ってるじゃないですか


「もう~☆ ホントひどいよ~☆」



 俺は――

 俺は、とんでもない思い違いをしていた。


 魔力のない、ちょっと――いやかなり頭の弱いただの魔法使い(♀)だと思っていた。


 だが違った。

 俺は見てしまった。


 ピンク色の髪をしたあどけない少女が、満面の笑みで巨大ドラゴンの腹をぶち破って出てきたのを――




 *




「アサシンの募集はありません」

「あ、はい」


 冷え切った発泡酒よりも冷たい目だった。


 ジョッキを持ってきた胸のクソでかい店員が、ゴミムシを見るような目で俺に言った。


「何度来てもムダです。アサシンのPTパーティ需要なんてないんです。さっさとキャラデリするか、ソロ狩りでもしててください」


 たたきつけるようにジョッキが置かれた後、ケツのでかい店員はさっさと別のテーブルへ消えていった。





 俺の名前はヒロ。いたって普通のプレイヤーだ。

 プレイヤーであふれまくってるこの酒場で加入できるPTが奇跡的にないかを探している。


 酒場内のいたるところで青い「!」マークのアイコンがプレイヤーの上に飛び出していた。新PT結成のしるしだ。


「とりあえずPTくんどいたほうがいろいろ便利だし~」というもの凄いおおざっぱな理由で大体のプレイヤーは気軽にPTを組む。


 俺を除いて。


 理由は簡単だ。俺がアサシンだからだ。


 俺がやってるこのVRMMOは、最近始まったばかりの期待のタイトルで「UNKnownアンノウン Onlineオンライン」という。略称はUNKOだ。ああそうだ。アレだ。ひどい略称になったが、製作者はこうなることくらい予測できたんじゃねえのかと思うので俺たちは何も悪くない。公式が悪い。


 「VRMMOが流行ってるから~」とかいう理由で量産型クソゲが大量にぶち込まれてきた中、「ライト層から廃人まで楽しめる! やりこみ要素満載の極限までゲーム性高めた没・入・感最強ゲームです!」とかいう、牛丼にカルビ焼きのっけたようなわけのわからない宣伝文句は意外と本当だった。やってみればわかるが、確かにクソみたいな量産型とは違うしっかりと作りこまれたファンタジックでSFでロマンティックな胃もたれするゲーム性は純粋にすげえなとは思う。


 そんなUNKOの最大の売りは、PTシステムだった。最大10名まで組めるPTシステムは、人数が増えれば増えるほど経験値ボーナスが増加する。さらにPT内にいるジョブの種類が多ければ多いほど追加で増加する。ドロップアイテムだって奪い合いが起きないように全員分ドロップするし、低レベルキャラが入れば育成ボーナスだってある。最高に「多人数参加型オンラインゲーム!」って感じのシステムだ。


 だが、俺はそんなゲームでPTメンバーができない。


 理由は単純だ。

 何度もいうが、俺がアサシンだからだ。


 そろそろ俺の胃が限界に達してきたので、PTメンバー募集ウインドウを開いた。同じ空間でガンガン「!」マークが飛び出す中、一人で5人掛けテーブルを占有し続けるのも本気でつらい。


 目の前で開かれた半透明のウインドウに、プレイヤーの募集内容がつらつらと表示されだした。



 ■ パーティ募集1件目。


  ―― 本気で狩りをするPTメンバー募集。戦士、ヒーラー、魔法使いのみ。


 はいきましたガチPTです~。アサシンの俺に席はないようです。



 ■ パーティ募集2件目。


  ―― まったりチャットするだけのPTです☆ 牧場を作ろう!


 牧場って何? っていうかそれここVRMMOでやる必要性ある?



 ■ パーティ募集3件目。


  ―― 全ジョブ大募集! 未経験者歓迎! レベリングも手伝っちゃう! アットホームなPTです♡


 うさんくせぇぇぇぇぇなんだこれハロワの求人か? 変な信者紛れ込んでるだろ。



 ■ パーティ募集4件目。


  ―― アサシン以外。


 ふ゛ぇ


 変な声が出た。唇を噛んでなんとか耐えた。

 直球過ぎるだろ。アサシンに親でも殺されたんか。




 俺は泣きながら酒場を後にした。一人で。

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