曇り

 どうにもいけませんな

 気分が塞がってしまいますからな

 ウヰスキーのボトルもすっかり乾ききって、

 絨毯に染みた茶色いあとから、チョコレイトの香りがするようで、

 どうにもこうにも潮時です

 夕べからずっと、空のひとつも拝んでおらぬものですから、

 あさまだき、そぞろ歩きも悪くはないでしょうな


 ああ、

 良い日です

 灰色の体に、鈍色の空から白い光が滲んで、

 ちょうどいいぐあいに、私の体を透かしてくれますな

 頼りない影法師は一人でに笑い出して、

 そのまま煙となって溶けていって、

 この陰鬱な私の精神を、曖昧に希釈してくれて


 柔らかな絹ごしの光が、

 何とも心地よく、私を包んでくれるものです



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