第55話カリュドーン

「カリュドーンはね。火や急な眩しい光に弱いんだ」


マリーンはそう言い始める。


獣の類の魔物・・・カリュドーンも含め、そういった魔物に対して通用する弱点は大体同じらしい。


「すごい・・・!物知りですね。コバヤシさんみたいだ!」


思わず二人が口にすると、


「へえ、彼から聞いたことがあるんだね。思ったよりお人好しなのか・・・!さて」


マリーンは「よろしく頼むよ」と言うとリッドの剣とアリサの矢に炎属性のエンチャントをした。


続けてマリーンは言う。


「僕は2匹のうち片方を追い払うから、後の1匹を倒して欲しいんだ。ただ矢に関しては1発分しかエンチャント出来ないのは分かるね?アリサはリッドの援護をして欲しいんだ」


「分かりました・・・頑張ります!」
















「闇を照らせ!ホーリー!」


マリーンは杖をかざしいつもより強く魔力を込める。


森の暗闇に慣れていた2匹は視界が真っ白になるとうなりを上げてパニックになった。


「いまだっ!」


リッドは動けなくなった1匹のカリュドーンに剣を突き立てる。暴れている獣にアリサは止めに矢を放った。


「良い動きだね」


マリーンは続けて残りの1匹に「燃えよ」と詠唱する。


対象になったカリュドーンは焼けながら森の奥に逃げて行った。


「やったね!二人とも!」


「「はい!」」


もう魔物はいないようなのでオークの樹液を採取した。


量としては大したことはないがまあこれだけあれば十分だろう。


ただここの魔物が全滅しただけではない、危険だし目的も果たしたのでさっさと街に帰ることにした。


レンジャー技能を持つアリサを頼りに出口を進む。こういうときはレンジャーの存在は非常に助かる。


森を迷って帰らぬ人になるなんてそんなのはゴメンだ。


「うーん」アリサはさっきから何かを感じているようでなにやらきょろきょろしている。そんな時、


「・・・旅のお方」


ふいに森に1人に住むには似つかわしもない女性が話しかけてきた。


突然に現れた人(?)だったが落ち着きを取り戻すと、マリーンは奇妙な質問をした。


「君は・・・スラ子の血縁かな?大丈夫、僕らはむやみな殺しはしてないよ」


「魔物だという事はバレているみたいですね。隠すのはやめしょう、私はエルンベルデと言います。この森の管理をしている魔物です」


リッドとアリサは武器を構えるとマリーンは「大丈夫だから」と二人を止める。


いぶかし気に二人は彼女を見ているが、マリーンは気にせず。


「彼女はコバヤシっていう冒険者と一緒にいるよ。とても楽しそうだ」


「そうですか・・・あと」


少しほっとした面持ちでエルンベルデは続ける。


「こちらに行けば帰れますよ。この森は魔物しか抜けられない道があります。彼女の事を教えてくれたお礼です」


彼女にエルンベルデが心配していたと伝えてくれると嬉しい、と言葉を残して。

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