第50話友人の依頼

「よ、よお」


「来たか、カイン」


集合場所は少し国から離れた街道だった。動物でも狩るのだろうか。


カインはどこかぎこちない感じでコバヤシに挨拶をする。


別に難しい依頼ではない、と言っていたが何をすればいいのだろう。


「こんにちわ!」


「お前は・・・スラ子だったか。よろしく」


「ところでカイン、今回は何をするんだ?」


「アリスにな・・・その、リンゴのジャムとウサギ肉を用意しようと思ってな。ただ品切れで・・・リンゴはともかくウサギは捕まえたこともなくてな」


するとスラ子が元気にカインに答える。


「まかせて!わたし動物を狩るの得意なんだ!」


「そうなのか。助かる・・・」


「俺がいま罠を作ろう。レンジャー技能は習得してるから安心してくれ」


コバヤシはカインに丈夫なツルを取ってくるようにお願いする。


カインはぎこちなく「わかった」とうなずいた。














ウサギ狩りは巣穴を見つけるところから始まる。


物音を外から立て、飛び出したところを捕まえるのだ。


コバヤシはツルを仕上げ、巣穴の前に仕掛ける罠を作っていた。


「コバヤシ・・・すごいな」


「どうも」


魔術で手を加えながら丈夫なツルを結び、ウサギを捕らえる罠が出来るとカインは賞賛を送る。


「カインも覚えておけば野営に協力出来るぞ」


「いや、俺は剣以外はからっきしなんだ・・・努力はしよう」


スラ子はウサギの巣を見つけるとこちらに手を振り、俺たちに知らせる。


「あったよ!コバヤシ!」


「ありがとう、スラ子」


問題は物音だが、


「カイン、巣の穴は2か所ある。向こうから大きな声を出してくれないか?」


コバヤシはカインにお願いする。


カインは「任せろ」と答えるのだった。














______狩りは上手くいった。


2匹ほどだろうか、ウサギを掴まえると「こんなものだろう」とカインは呟く。


「そういえば、なんでカインは俺に頼んだんだ?まあ、断る理由はないが・・・」


「いや、まあ。・・・あれだ」


「?」


「俺はコバヤシを信用してる。最初は色々言ったと思うが・・・済まなかった」


「らしくないな。」なんて思わず笑いながら答えてしまったが、仲良くなれたみたいでよかった。


ふと、カインはスラ子の身につけている掌くらいの青い石に気が付いた。


「その石・・・えーとなんだったけか、エリスのやつが使ってた何とか魔石・・・ってやつに似てるな」


「アダマイト魔石か?」


コバヤシもそう思っていたが、魔術師が一般的に使用するサイズよりかなり大きい。


なので何かの宝石の一種かと思っていた。


ただ、


「これは以前にお世話になった宿の主人がくれたんだ。でもこのサイズのアダマイト魔石だとすると、ドラゴンくらいの大物サイズのやつだが・・・」


「そうなのか、冒険者でもない奴が持ってるわけがないな」


「ふむ・・・」とコバヤシは答える。


商人ならこのくらいの宝石を扱うものなのかもしれない。


「なあ、コバヤシ。よかったら次の俺たちのパーティの依頼、一緒にいかないか?」


「ああ。わかった」


「やった!アリスちゃんに会うの久々だしリンゴのジャムでも持っていこっと!」










「カイン、応援してるぞ。」


「あ、ああ・・・」


多分、理由は・・・。


「カインさん!アリスさんが・・・○△×・・・!!!」


「少しは気を遣え」


スラ子の頭をコバヤシは軽く小突いた。

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