第15話神の代行人

暗闇から、ダートが続けて放たれる。彼女達はスラ子に任せ、自分は全力で避けることに専念する。


「なかなかやりますね。ですが・・・」


ノアはダートを両手に、3こずつ持つと「ミニピレイト」と詠唱する。


そしてその後放たれたダートは曲線を描き、誘導するように飛んできた。


「・・・なっ!?」


このダートは恐らく誘導する。あの言葉は「操る」という意味だ。


コバヤシは足に魔力を集中させ後ろに飛びのくと、斜め前にある壁に駆け上がった。魔力で強化すればあの代行人程の動きではないが、ある程度は身体能力を底上げできる。


カッ!カカッ!


曲がり切れなかった誘導するダートが壁に当たる音が聞こえる。


勢いよく駆け上がった壁から反転して降り立つと、一気に強化した脚力で距離を詰める。


「へえ。なかなかやるんですね。並みの冒険者なら6こものダートは避けられません。ですが・・・」


不意に、その代行人は身の丈を大きく越える鎌を召喚した。それは圧倒的なリーチを誇る凶器だった。軽々と持ち上げているが、それは並みの人間が持てる物ではない。


「距離を詰めるのは・・・失敗、でしたね」


勢いをつけたが、それは失敗だった。横なぎに鎌を振るうと、咄嗟に魔剣の刃を横に持ち受け止める。


「くっ・・・!」


「コバヤシ!」


危うく首を落とされそうになったが、なんとか防げたようだ。


しかし、これは。


「ぐっ・・・・このままでは・・・!」


そのまま鎌に押さえつけられて動けない。


ノアは笑いながら圧力を強くする。


「なかなかやりますが、そうですね。相性が悪かったってとこですね」


並みの膂力ではない。およそ見かけよりも遥かに強い力だ。


その瞬間、


「冒険者様!」


メイドが肩に刺さったダートをノアに投げた。


「・・・!」


ノアの視界外の攻撃だったが、鎌を持ったまま。たやすいと言わんばかりの顔で避けた。


「ここだ!」


その一瞬、鎌に込められた力が弱まった。魔力を膂力にすべて回し、鎌を突き放す。


「こちらに来てください!」


メイドが手をこちらに差し出す。スラ子もメイドの手を握った。


____コバヤシは全速で駆けた。後ろからの攻撃など、考える余裕はない。


背中と腕にダートが刺さる。


「負けるか!」


メイドの手を取ると、空間が歪み。


・・・彼らは消えた。


「ふうん・・・やりますね。まあ顔は覚えましたし、今夜はこれで見逃してあげましょう」


ノアは何でもない風に、教会に入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る