第10話大バカ者
「くっ・・・!」
「へえ・・・その魔剣、喋るんだ」
不思議な魔力をその爪からは感じた。掴まれると不味い気がする。
「あの爪は掴んだものは絶対離さない、自分の許可したモノなら離すことが出来る。掴まれたらあとはお前の急所に強力な一撃を喰らわせるだけだ」
「そんなことしないわ、ただ魅了の魔眼でモノにするだけよ」
そんなのはゴメンだ。カーリは無邪気に笑いながらこちらを見る。
「無駄よ。まあ多少はその魔剣で防いでいるみたいだけど、その武器を破壊してしまえばいいもの」
加速をつけて接近してくる。魔力で強化された動きだ。
「多少はおとなしくしてはもらうけどね・・・!」
本能的に目と足に魔力を分配する。素早く繰り出される爪。手を広げ、掴む。それだけの動きだが当たれば確実に魔眼で洗脳される。
紙一重で避けるが、早い・・・!
「目で追うより早く動け!」
!?
この声、まさか・・・!
「貫く、氷の刃。連なり、対象を破壊する一撃!アイス・エニード!」
「痛ったあ・・・!こんなもの・・・!」
カーリはあろうことか降りそそいだ、いくつかの氷の槍を掴み、投げ返してきた。
「危ないっ!」
アリスはエリスに当たりそうな氷槍(ひょうそう)を長剣で切り落とす。
「食らえっ!」
カインは隙を見つけカーリを大剣の側面の部分でぶっ叩いて、吹っ飛ばした。
既にこの手の輩に通常の武器は効かないことを覚えている。怯ませる目的で放った攻撃だった。
「痛いって言ってるでしょ・・・!」
壁に叩きつけられ、血を流しながらこちらを睨む。
状況は既に不利だった。いつの間にかムシュフシュが倒されていたことに気づいた時には遅かったようだった。
「ふん・・・!いいわ!どうせ戦闘向きな武器でも能力でもないし!」
どうにでもしろ、と両手を差し出す。逃げ出す時間もないと悟ったのか。
「こんなに強い人ばっかりで逃げられるわけないでしょ。早く拘束するなり殺すなりしてよ!」
「殺すのは国に帰ってから決めることだ」
ブローは拘束術式でカーリの腕を縛る。
「コバヤシ!お前は何故黙って街を出た」
カインがらしくなく怒っていた。エリスもアリスもだ。
「あなたは自分のせいで街が襲われたと思ったのですか?卑怯にもほどがあります」
「私たちはスラ子ちゃんから手紙が来てたの。あなたが出ていく前にね・・・」
あいつ・・・そんなことを。
余計なお世話だとは言えなかった。助けて貰ったのだから。
「悪かった。俺はただ、巻き込みたくないだけだった。それが迷惑だったのなら謝る」
頭を下げた。それがいま俺に出来る事だと思ったからだ。
「こっちこそ悪かったな。別に・・・本気で怒ってるわけじゃない」
カインは恥ずかしそうに頭に手をやるとほら帰るぞ、と言った。
アリスとエリスも笑いながらまた依頼でね。と帰っていく。
「友達、いるじゃないか。君はいままで辛かったといっていたろ。心の傷は人にしか癒せないんだ。彼らも協力してもらえばいいさ」
ブローはカーリをアンジェリカに任せると、ニイナを担ぐ。
コバヤシが馬車に向かう足は、すこし早足だった。
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