第8話ムシュフシュ討伐2

(あいつら・・・ツガイ、だね)


(ああ。ここは街からさほど遠くない、放置するのはかなり危険だ)


ムシュフシュの死角に影を潜め、アンジェリカとニイナは冷静に状況を見る。


(1匹だけでもきついのに2匹とは、厄介な状況になったものだ)


・・・!?


一瞬、少女が見えた気がした。まさかこんな状況で人が現れるわけはない。しかし、あれは・・・。


「いい子ね。そろそろお目当ての冒険者が現れてもいいはずなのだけれど・・・」


どこからともなく現れたその人物は、まるで動物のかのようにムシュフシュを撫でると、辺りをキョロキョロと見渡す。


「それとも・・・誰か、隠れてるのかしらね・・・!!」


腕をおもむろに振るうと、柱が大きく抉れ、吹き飛ぶ。


(・・・!)


一歩間違えば、私たちがそこにいたのかもしれないポイントに強力な一撃を繰り出した。


(気づいてる・・・!?)


二人は、そう直観するがそれは確信に変わる。


「ほら、出てきなさい。匂いでわかるわ。上質な人間の香りよ」


(・・・いこう!隠れても無駄だよ。多分あいつ・・・落ちた天使・・・!!)


ニイナがこちらを覚悟を交えた目で見る。アンジェリカは彼女に従い、ゆっくりと二人は影から見える位置に移動する。


「ふうん・・・なかなかいい覚悟ね。気に入ったわ、ねえ。コバヤシっていう冒険者の事知らない?」


「なぜだ?」


「聞いてるのはこっち」


赤く瞳孔が開いた眼でこちらを見る。一瞬気圧されたが、アンジェリカは気後れしないように答える。


「知っている」


嘘をついたら恐らく、殺される。少しでも時間を稼いで、パーティ総出で叩けば勝てるかどうかの相手だと察知した。


「こちらへ向かっているはずだ」


「じゃあ、待っててあげる。興味あるのよね、その冒険者」


とりあえずは安心する。いますぐ攻撃されるわけではないようだ。


「でも、そうね。来るまでは退屈じゃない?この子と遊んでみる?」


「グルルル・・・!」


ムシュフシュがアンジェリカを見て、牙を向ける。


「危ない!」


アンジェリカは咄嗟にオハンの盾を構え、毒のブレスから身を守った。


ニイナは跳躍し毒のブレスの範囲外へ離れる。


「へえ、この子のブレスも防げるんだ。その盾」


感心したようにこちらをみる。ニイナと同じくらいの見た目なのに落ちた天使の危険性に再認識させられた。


「アンジェリカに・・・攻撃するなっ!」


・・・!


不味い。彼女は私が何か言う前に飛び出してしまっていた。


しかし聖剣による一撃はその少女には届かない。


「ふうん。わたしに防御させるなんて、やるじゃない」


少女は聖剣の柄の部分を受け止めて最小限の力で抑え込むと、ニイナの胴体を思い切り殴った。


「ガッ・・・ハッ!」


重力を無視して吹き飛び、壁に叩きつけられる。


愉快そうに少女はこちらを見て笑う。


「ふふっ、あなたもこうなりたい?」


「くっ・・・!」


少女の目を見る。もう見逃してくれる気はないらしい。覚悟を決めて剣を構える。


その時、












「俺に用があるんだろう?」


コバヤシは最悪のタイミングで声をかけた。

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