第31話 ご褒美

 自分が、ブザービートしたからバスケで優勝したのか……。

 やばいなー。部屋の天井を見ながら手を開いて伸ばす。

 あの景色は、未だに目に焼き付けたままだ。


 バスケの試合楽しかった。あの優勝した時の光景も好きだったから早く次の試合が近づいてほしいとか思ってしまう。


 そういえば──雫に優勝した時に自分が、ご褒美欲しいっておねだりしてたの忘れてた。


 明日、学校だから雫にちょっと聞いてみるか。


「雫、おはよう」


「おはよー」


 眠そうに見えるから頭を撫でて心配する。


「どうしたの? 眠れなかった?」


「うん。ちょっと悩み事」


 悩み事!? それは、大変だ……。


「手伝えることがあるなら手伝うよ!」


「うん。ありがとう! 必要になったら言うね!」


 必要になったらか……。どんな悩み事か気になるけど、しつこく聞くのもなんか違うよな。


 自分に解決できることじゃないのか。


 それから自分抜きで雫が真帆ちゃんと澪ちゃんに相談しているのが増えた。


 何日か経った日に雫から放課後、人がいなさそうな所を指定して話がしたいと呼び出される。


「雫、話したいことって何?」


「ご褒美の話、デートしたいから休みの日は、予定空けといて!」


 それだけ伝えられて足早に去っていて自分だけ置いていかれた。


 雫の行っていた日は、何も予定入っていなかったのでデートをウキウキで楽しめる!


 バスケの部活は、体育祭に集中するように言われたから部活もない。

 応援団の練習は、昼休みにするようになったから放課後になると早く帰れるようになった。


 着々と体育祭も準備が進んで行っている。


 次の日は、デートか。

 どこで待ち合わせか聞いてない。


『雫、夜遅くにごめん。明日のデート、待ち合わせ場所聞いてなかったからメールしたんだけど今大丈夫?』


 よし! 夜にメールしちゃったからお詫びの言葉も一緒にしてメール送信!


 メールの着信音が鳴って携帯のメールを見る。


『私こそごめん! 肝心なとこら伝え忘れてた!     私が迎えに行くから家で待ってていいよ!』


 雫っておっちょこちょいだよなー。

 迎えは雫がこっちに徒歩来るのは、危ないから自分が迎えに行く方がいいかも。


『いや、わたしが迎えに行くから雫の方が家にいて!』


『はい……』


 ナンパされるのが雫は、多いから狙われたらやすいと思って自分が迎えに行くという選択肢になった。

 メールをして眠りにつく。


 デート当日。


 服装は、シンプルでオシャレな服だからそれに着替えて暑いから適当に団子ヘアーにして雫の家に行く。


 雫の家のインターホンを押すと出てきたのは、雫ではない人物で、誰か分からずにうろたえながら挨拶をしてしまう。


「あっ、もしかして雫に会いに来たのね!」


 凄くふわふわしたような方で若いな。


「はい! そうです。千葉 怜と言います。よろしくお願いします!」


「ふふっ。そんなにかしこまらなくていいよ?」


 はいとお辞儀をして部屋に上がるように入られたので、戸惑ってたら悲しそうな顔をするので断れるわけもなく家に上がることになった。

 親切に雫の部屋まで教えてくれる。


「教えてくれてありがとうございます!」


「いいのよ。雫は、起きてるかわかんないから入っちゃっていいよ!」


 寝ているなら寝顔を拝見できるということか。

 部屋をノックして中から返事があったので入る。


「──えっ!? なんで怜がいるの! お母さんかと思ってたのに!!」


 雫の姿は、下着だったのでそれも一瞬だけ見えてしまったので急いで夏用のアウターを被せて後ろ向く。


「ご、ごめん!」


 これは、に仕組まれたことなのかな……。

 あの方って家族の誰だろう。若そうだったけどお姉さん?

 姉妹いるとか聞いたことないよなー、とか考え事をする。


「きゃっ!!」


「雫、大丈夫!?」


 雫がスカートを履いてるが、上の服を着ていない。雫をベットに押し倒したみたいな状態になって雫と目が合う。

 さすがに目をそらしたけど白い素肌があらわになってるのを見て雫の姿をガン見してしまった。

 やばい、怒られると思ってたけど反応も何もなかったから安心していたが無言で枕を顔に当ててくる。


「雫、ごめん! わざとじゃないから!」


「エッチ!!」


 謝っているけど口も聞いてくれない。

 黙って黙々と着替えを済ませている。


「ご飯食べるから一緒に下に行こ」


「う、うん」


 キッチンのところに玄関で挨拶を交したお姉さんがいる。


「雫ってお姉さんいたんだね」


「お姉ちゃんなんていないよ? もしかして──お母さんのこと?」


 お母さん!? 見えない……。


 雫のお母さんが料理を持ってくる。


「すみません。お姉さんだと勘違いしてしまいました」


「嬉しいなー! 雫のお姉ちゃんに見えるなんて褒め言葉もらえるなんて思ってもなかったわ!」


 雫のお母さんは、優しい方だ。

 母子家庭って聞いてたけど、こんな若いお母さんだとは知らなかったな。

 自分のことをただの雫の友達だと思ってるだろうな。自分達が付き合ってるって知ったらショックを受けるだろう。


 バレないようにしないといけないよね。


「雫とは、とても仲良いように見えたから安心したわ」


「いえいえ、こちらこそ! 雫さんには、いつもお世話になっていますから!」


 雫のお母さんとの会話が繰り広げられていたからか急いで食事を済ませている。


「今から出かけるから! 話は、そこまでにして!」


「わかったわー」


 お母さんが、のほほんとした返事をしていて会話の仕方が反抗期っぽい雫の新たな一面を見れたりして新鮮だった。

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