第12話 ユアside僕の可愛い人

あれは薔薇の香りが風に乗って感じる季節だったと思う。


イヤイヤ付いていったタクシーム侯爵夫人である僕のお母様の仲良しのお茶会で、僕は天使に出会ってしまったんだ。



日差しの中でキラキラ煌めくミルクティーの様な髪は触ったら溶けてしまうんじゃないかと思うほどふわふわしていた。


後ろから見たら明らかに僕とは違う華奢な身体つきに、最初は女の子かなと思ってしまったんだけど。


よく見たら僕と同じ様に膝上の淡緑色の半ズボンを履いてる。




僕のお母様に声をかけられて振り向いたその子を見た瞬間、僕はやっぱり天使はいたんだと確信したよ。


真っ直ぐ僕を見つめる深い海の様な瞳は吸い込まれそうだったけれど直ぐに柔らかく緩められた。


紅く色づいた唇がニッコリとカーブを描いたのを見た瞬間、僕は胸がバクバクと息づいて苦しいくらいだった。




多分耳まで赤くなってしまったのかもしれない。


僕達のお母様方はクスクス笑いながら良いお友達になれそうねと話していた気がする。


カーッとしてあまり細かい事は覚えてないんだけどね。




それから1年経ってリオン様は10歳、僕は9歳になった。


今でも僕はしっかりリオン様にまとわりついてる。


会えるのはもっぱらお茶会だから、お母様には絶対スペード伯爵家は外さないでと頼む始末で。




リオン様は会えば会うほど惹かれてやまない人だった。


あんなに美しくて可愛いのに、本人は全然その事に気づいてない。


無意識に無邪気で悪戯っぽい表情を浮かべるもんだから、女の子は勿論なんだけど、どちらかというと僕たち令息達がリオン様のお側に居たくなってしまってお互いに牽制しっぱなし。



僕は早々にリオン様のワンコポジションをゲットして思い切り抱きついてる。


リオン様はしょうがないなぁっていっそ頭を撫でてもらったりなんかして、とっても役得なんだ。


リオン様には5歳上の兄上がいらっしゃるお陰で、弟を愛でる事にちょっと憧れてるみたいだ。


だから僕は一つ年下なのを良い事にリオン様に甘えてみせるんだけど。


クスクス笑いながら僕を可愛がってくれるリオン様は時々とっても甘々しくて、僕的にはワンコ戦略なんだけど…胸が締め付けられて息も絶え絶えになりそうになるよ。


ほんと萌え殺されそう。




リオン様のいない所ではリオン様に上手く近づけない令息達が、羊の皮を被ったオオカミだって僕のことを言い募るんだ。


悔しかったらリオン様に甘やかせてもらいなよと、僕は負け組は無視して隙あらばリオン様にぴったりと張り付いてる。


でも彼らは彼等で、人見知りしてはにかむリオン様に悶えてるから、まぁ罪な人だよね。


僕の可愛いリオン様は。ほんとに。

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