8/11 超✱不思議な感覚vol.3
不思議なる体験シリーズですが、図らずも前回に引き続き、第三弾です。
くしくもお盆の時期を迎え、何かご縁の様な物を感じ、思わず、筆を持つ手も震えつつ、力がこもります。
意識がなく、こんこんと眠っている状態でしたが、稀にふと気が付いては、またすぐに眠りの世界へと戻っていました。
ある時、人の気配を感じたのでしょうか?不意に目が覚めました。
するとそこには、義実家の両親が、心配そうな様子でこちらに向かって立ちすくんでいます。
(ああ、夫が呼んだんだなあ、って事は、私は今やっぱり、まずい状態なんだ。)
意識がないだけで、思考はすこぶるはっきりしっかりしているんです。
(こんなに心配かけちゃって、病院にまで出て来させちゃって、申し訳ない。)
と思うのと、
「まだ何も親孝行していないのに、こんな事になってごめんなさい。」
と口をついて出たのとは、ほぼ同時でした。
それを聞いた義父が困惑している様な雰囲気があり、義母が、「あなたが元気になる事が、一番の親孝行ですよ。」と涙ながらに言ってくれたのを聞いた段階で、返事を述べる間も無く、再び眠りへ。
義両親も、それは不安だった事と思います。
それからは、前述の様に、手のひらの君の、文字通り手当てを受けて、なんとか死の淵に引きずり込ま込まれずに持ちこたえていたのですが。
ついに、手当ての君の効力が失われる時が来てしまうのです。
たまたま非番だったのか、他の危篤患者の病室に行かれていたのか定かではないのですが、
ある時、苦しさに気付くより前に手を当ててくれているはずの、手のひらの温もりとパワーが感じられずに、いきなり、自分の呼吸の苦しさを突きつけられた時がありました。
今まで生きていて、一度だって経験した事のない苦しさです。
苦しい。苦しい。息が苦しい。息が出来ない。
この苦しさから、一刻も早く逃れたい!
今、振り返ると、この時、この世に対するなんらかの感情が無かったのかどうか、何とも言えません。
ただ私は、迷わず真っ直ぐに、上に向かって、願いを馳せていました。
苦しい。苦しい。お父さん、助けて!
パパ、迎えに来て!
そっちに連れて行って!
そう、強く念じ、既に天国に行っている父を呼んだのです。
もう嫌だ。もうこんなに苦しい思いをするのは嫌だ!
楽になりたい。助けて。早く迎えに来て。連れて行って。
その一心でした。
尚も呼吸は乱れ、苦しみ続けるのみだった私の耳に、唐突に聞こえて来た言葉があるのです。
「たーちゃん!」
びっくりマークを敢えて付けましたが、とても力強い声で、こちらの注意を丸ごと持って行かれる様なすごみを含んだ声でした。
更に、私にとっては懐かしい、たーちゃん、という愛称。
この愛称は実は、私が小さい子供だった頃に、両親が、特に母親が、私を呼ぶ時に使っていたニックネームでした。
大きくなってからは誰も使わなくなっていたニックネームですから、例えば私の夫なども、これについては知らないくらいの話です。
もっと言えば、そんな半世紀近く前のニックネーム、私自身だって、とっくのとうに忘れ去っているレベルです。
ところが、呼ばれたんです。
そんな呼び方するの誰?!
懐かしいやら驚いたやらで、思わず一瞬苦しさを忘れて、パッと目を開けてしまったのです。
するとそこには、私の顔の真ん前に、「近っ」というくらいに近く、Ns.の顔があったのです。
若い、男性のNs.で、何度か担当してくれていた記憶がある方でした。
細マッチョな印象の方で、小さくて細くて、でも男性だから力仕事やります的な感じの、好青年でした。
その方が、真っ直ぐに私の顔を覗き込み、いつになく真剣な表情を浮かべています。(近っ)
そして、彼が知っているはずもない、私の愛称を呼びかけた後、続く言葉を発したのです。
「これからたくさん、楽しい事があるんだから、今頑張らなくちゃダメだ!」
Ns.の口からその言葉が発せられたのを見届ける様にして、私は気を失いました。
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