走馬灯コースターへようこそ

たーちゃんさん

8/23 悲願

20年前に、院内学級でお仕事させてもらっていた頃、生徒さんから頂いた、大切な大切なお手紙があります。


20年前の私がその様な境遇の生徒さん達と接する中で、矢も盾もたまらず献血ルームに走り、人生初の、骨髄バンクへの登録を行ったという事は事実です。


登録は済ませたものの、もし本当にお呼びがかかっちゃったらどうしよう…怖いなあ。


これは、登録してから数年が経過した頃、心に浮かんだ思いです。


腰の骨に太〜い針を刺すんでしょう?


いっくら麻酔するって言ったって、有り得ないでしょう!ガクブルガクブル。


情報ばかりが独り歩きする、というのでしょうか?

恐怖をあおる様な表現が印象に残り、骨髄を提供した際のトラブルなどについても、バンクニュースという、骨髄バンクが定期的に発行している機関誌に、包み隠さずありのままのデータを載せて紹介してくれているのが、かえって恐怖をあおると言うか…


家族だって、心配のあまり反対をするかも知れない。


移植コーディネーターさんとじっくりお話をして方向性を決めて行くって言うけど、そんな簡単に考えがまとまるとは思えない!


バンクから呼び出しがかかったわけでもないのに、あれこれ考えては悩んでしまう事もありました。


そして、登録してから20数年後、まさかの、自分自身の為のドナー探しという立場から、バンクへの検索をかけるという出来事が起こった訳でした。


「ただ一人、白血球の型が同じドナーさんがいました!」


お茶目な主治医のナイスジョークを待つまでもなく、その登録者とは、まさに私自身そのものであった訳です。


皮肉なものでした。


しかしいざ、立場が逆転してみると、思いも全く変わります。


ちゃんと全身麻酔でやるんだから、痛くも何ともないでしょ!

こっちは命がかかってんだから、それくらい頑張ってよ!


術中術後のトラブルだって、天文学的に微少な確率の話でしょうが!

私の命はどうしてくれるのよ〜?!


いや、全ての患者さんがこの様な考えを持つという訳ではない、とは思います。


あくまでも、私個人の、極めて個人的な発想に起因する勝手な思いを、正直に書かせて頂きました。

多方面からお叱りを受ける覚悟でございます。


結果としては、奇跡的にも、骨髄移植を受ける事が叶い、今現在は元気を取り戻している私でありますが、ここで述べておきたい事があります。


一人でも多くのドナー登録者さんが、この日本にいて欲しい。


こんなに広い日本なのに、自分と同じ、あるいは似ている型の白血球を持っているドナー候補者さんが、一人もいないなんて。


そういう時に、目を外に向けて、広く海外にチャンスを求めたいと、主治医にかけあってみた事があるのですが、当時私は治療で脳細胞を根こそぎやられてしまっていたのか??

はっきりした回答については、記憶がないのです。


骨髄液を採取した後、患者への移植に当たっては、当然、時間のリミットだってあると思います。その他にも諸々、あらゆるハードルが立ちはだかっている事は、想像がつく様な思いです。


その上での、日本に一人でも多くのドナー候補者さんたちを!!

という、悲願なのです。


具体的に、腰の腸骨に針を刺して骨髄液を採取する方法以外にも、入院期間は数日延びてしまいますが、血管内にある造血幹細胞を少しずつ採取していく方法もあるそうです。


こちらの方法であれば、全身麻酔を施す必要もなく、献血の感覚で、一日一回採血をしてもらって、必要な造血幹細胞を取り出した後に、残った血液はまた体内に戻して貰える処置なので、身体的、心理的な負担はかなり軽減されるのではないでしょうか。

目からウロコ情報ですよね。


日進月歩の医療。実に頼もしいです。


ちなみに、登録時に痛い思いをするのではないかと誤解されている方もいらっしゃるかも知れません。


登録時は、献血同様、血液を採取するのみです。


「ちょっとチクッとします。ごめんなさいね〜。」優しく素敵なスタッフさんの笑顔にいやされに、はたまた残暑の厳しさを逃れ、ひと時の涼を求めに、是非献血ルームへ遊びに行ってみて下さいね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る