深淵から覗かれたい!
大粒いくら
1、琴葉
―ねえ、この先ってどうなってるのかな
知らない、そんなこと。
―端っこはどうなってるんだろうね。
真っ暗で何も見えないじゃない。
―だからだよ。逆に気になると思わない?
そんなの、どうでも良い。眠い。
―もうちょっと、奥まで覗きたくない?
別に覗きたくない。ほっといてよ。
―ちょっとだけで良いからさ。一緒に行こうよ。
うるさいな。静かにしててよ。
―ねえ、ねえ!恐いんだったら、僕が手繋いでてあげるよ。
恐いんじゃないよ。眠いんだって。
―ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ!
うる
「…さいって言ってるでしょ!!!」
私、
「姉さん。僕、毎朝思うんだけどさー」
皆まで言うなというやつ。
「申し訳ありません。ごめんなさい。失礼しました。」
「いや、もう慣れっこだけどね。これもまたどうせ嫌がるんだろうけど、お医…」
「嫌。」
「だよね。朝ご飯食べちゃってよ。片付かないからさ。」
私は毎朝同じ夢を見る。否、正確には見ているらしい。起きた時に内容は覚えておらず、只、何となくまた同じ夢を見た気がするといったものである。
奏多によると、私は相当うなされているらしい。揺すり起こそうとしても、うなされ初めてからある程度時間が経過しないと、揺すっても叩いても蹴っても起きないんだそうだ。そして、僅かずつではあるが、月単位年単位で見ると、うなされている時間が延びているらしい。
それを心配した弟は、毎朝律儀にうなされる姉に起床を促しに来る。そしてうるさいと私が大声を上げてしまうまでが、毎朝の我が家のルーティンだった。
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