186:ゆるママ、Vtuberデビューの準備!

「とうとう完成した⋯⋯」


 私は作業の合間にコツコツと自分のVtuberとしての肉体を制作していた。


 と言っても3Dモデルを作ってもまともに動かせる環境を今の私は持っていないから、2Dで動かす事にしていた。


 だけど、絵は描けてもその絵を動かすと言う分野においては私は素人同然、だから調べながら少しずつ設定をいじっていった。


 でもそのうち3Dも手を出してみたいとは考えているんだけど。


 こう言った事を一人で出来る様になれば今後似たような依頼を自分一人でこなせるようになるから決して無駄ではないと私は思ってる。


「慣れてないから苦労したぁ⋯⋯」

「んっ?お姉ちゃんやっと終わったの?」

 部屋で唸っていた私の様子を見に来たのか由良が部屋に顔を出しに来た。


「由良ぁーやっと終わったぁー!」

「お姉ちゃんお疲れ様、これで優希くんとコラボ出来るね!」

「も、もう!それだけじゃないってば!」

「このこのー、本当の事言っちゃえー」

「ま、まぁ、確かに優希くんともっとお話し出来るようになるかな⋯⋯ってちょっとは思ったけど」

「やっぱり思ってるんじゃん!」

「だって⋯⋯」

「でもこれでその夢が叶うかもしれないよ?」

「うん、でも私、絵を描く以外の事はあんまり得意じゃないから、結構Vtuberしっかりやれるか不安なんだ⋯⋯」

「じゃあ、逆に優希くんに教えてもらったら?いつもお姉ちゃん優希くんの、ゆかちゃんの絵とか描いてあげてるんだし、それくらい協力してくれそうだけど?」

「いや、だってあれは私の好きで描いたやつだし⋯⋯」

「缶バッジとか色々やってあげてたじゃん」

「だって、あれもお金はちゃんと貰ったから⋯⋯」

「あー!もう!じれったいなぁ!

 メールでVtuberの配信の事について教えて、って送ればいいんだよ、お姉ちゃん!」

「わ、分かった⋯⋯」


 優希くんの名前を出されると少し冷静でいられなくなってしまう私を見て由良がやきもきしてしまった、そんな由良の圧に負けて私はスマホを手に取った。


「うっ、でもやっぱり優希くんに迷惑じゃないかな?」

「お姉ちゃんは乙女か!?」


 そんな事を言われても必要な事以外であんまり連絡しないから、迷惑だと思われたらと思うと気が気じゃなくなるなんて仕方ない事だと思うんだけど⋯⋯


「いや、よくよく考えたらお姉ちゃんは乙女か⋯⋯」

「由良?何言ってるの!?」

「だって、お姉ちゃん今まで彼氏なんていた事無いし」

「うぐっ」

「誰かを好きになったとか一回も聞いたこと無いし」

「ぐふぅっ」

「それに、男性アイドルとかにも興味示さなかったし」

「ぐはぁ!?」

「あれ?もしかしてお姉ちゃんって⋯⋯」

「そ、それ以上は言わないで⋯⋯」

「仕方ないなぁ、って事でちゃんと優希くんに連絡してね? お姉ちゃん」

「分かったよ⋯⋯」


 私は心に甚大なダメージを受けながらも、由良に言われるがままに優希くんへメッセージを送信した。



「こんな時間にメッセージ⋯⋯なんの

メッセージだろ?」


 ベッドでゴロゴロしているとスマホにメッセージが届いた音がした。

 届いたメッセージを確認する為に僕はスマホを手に取った。


「あれ? 薫さんからだ」


 一体何の用事なのか気になった僕はメッセージを開きその内容を確認した。


「薫さんVtuberのモデル出来たんだ⋯⋯どんなデザインなんだろ?」


 メッセージは薫さんのVtuberの2Dモデルが完成したと書いてあった。


 白姫ゆかのクオリティから考えるとかなり高クオリティな物が出来上がっている事は想像に難くない。


「それで、問題は⋯⋯」


 メッセージ続きにはVtuberの配信にでやる事や必要なソフトについて教えてほしい、と書いてあった。


「Vtuberの配信について⋯⋯かぁ」


 正直僕なんかがそんなに詳しく教えられるのか不安ではあるけれど、今までお世話になって来てたから頑張って答えないとだよね!


「でも、メッセージで答えるのは、難しいよねこれ⋯⋯」

「うーん、なんて送ればいいんだろう⋯⋯」

「メッセージだと話辛いけど、どうやって教えればいいんだろ⋯⋯?」


 少し考えた結果、薫さんに聞いてみる事にした。



 優希くんにメッセージを送った私はドキドキしながらスマホを横目に見つつ、イラストを描いていた。


「き、気になって作業が進まない⋯⋯」


 ダメダメ、こんな事で緊張してたら身が持たないよ。


 それに、優希くんがもう寝てる可能性だってあるんだし、すぐに返事が来るわけ⋯⋯


 そんな事を考えていると、突然メッセージが届いた音がスマホから鳴り響いた。


「きっ、きたっ!」


 そしてその内容を見て私は間違いに気付いてしまった。


「焦るあまり、肝心のどうやって教えて貰うか決めて無かった⋯⋯」

「どうしよう⋯⋯」


 VC? どこか落ち着いた場所で教えてもらう?


 家に呼ぶのも悪くはないけど⋯⋯前の風邪引いちゃった時のことを思い出しそうで少し恥ずかしい。


「となると⋯⋯」


 私は椅子から勢い良く立ち上がって由良のいる部屋へ向かった。


「ねぇ由良!」

「ふぅぁ!?お、お姉ちゃんいきなり入って来ないでよ!びっくりしたじゃん!」

「ご、ごめんね」

「まぁいいや、それでどうしたの?」

「えっとね、優希くんからこんな返事が来たんだけど⋯⋯私すっかりどうやって教えて貰えばいいのか決めるの忘れてて⋯⋯」

「お姉ちゃんって結構ドジだよね、こういう時」

「否定出来ない⋯⋯」

「私としては個室のカフェだったり、家に呼んだりするのがいいと思うかな」

「個室のカフェかぁ⋯⋯」

「優希くんの口から自分が白姫ゆかですって発言が出ちゃうと問題が起きちゃうかもしれないからやっぱりそれくらいはしておいた方がいいと思うよ」

「分かった、ちょっと調べて優希くんの暇な日にどうか聞いてみる事にする!」

「そうするといいよお姉ちゃん」

「うん、由良ありがとう!」

「頑張ってねー」


 私は自分の部屋に戻り優希くんにその事をメッセージで送った。


 今度は返事が直ぐに来て、カフェで大丈夫って事だったから、次の土曜日のお昼から会う事になった。


「お姉ちゃん、良かったね」

「ゆ、由良!?良かったって何が?」

「個室デートじゃん」

「でっ!?」


 由良はそう言うけれど、デートじゃなくて教えてもらうだけ、そう、教えてもらうだけなんだから⋯⋯


「んじゃ当日は頑張ってねー、私は応援してるよー」


 由良はニヤニヤしながら私を揶揄うと自分の部屋に戻って行った。


「意識させるような事言わないでよ、もう⋯⋯」


 私は頬を少し膨らませながら作業を再開した。

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