184:ナンパ男、震える
アンケートの投稿が完了し、打ち合わせも終了した僕達は今、スイーツを食べに来ていた。
「ここだよここ!優希くん、甘い物好きって聞いてたからここ連れて行ってあげたかったんだ!」
「あっ、私もここ知ってる。
たまに由良がおやつに買ってきてくれてたお店だったような⋯⋯」
「あっ、あの、先輩に、薫さん?」
「どうしたの?」
「優希くん何々?」
僕はお店を前にウキウキしている二人に対して言わなければいけない事があった。
「なんで、僕が女装しないといけないんですか!?」
「だって、もしわたしがデートしてるなんて週刊誌にすっぱ抜かれたら⋯⋯ね?」
「いや前に東京で遊びましたよね!?
それに今日だったら薫さんもいますよね!?」
「⋯⋯こ、細かい事は気にしない!」
「でも女装してくれる辺り優希くんは優しいね」
「だってあれだけお願いされたので⋯⋯」
「お願いしたわたし達が言うのもあれだけど、優希くんが嫌なら断って良いんだよ?」
「着たら喜んでくれるのでつい⋯⋯」
断ろうとすると寂しそうな顔で見つめられたりするし、断ろうって気分になれなくなっちゃうのもあるけどね。
「「可愛すぎか??」」
「えっ?」
「いや、なんでもないよ!」
「そうそう、気のせい気のせい⋯⋯」
そんな風に誤魔化されながら、僕達はお店に入りスイーツを堪能した。
♢
「美味しかったね優希くん!」
「やっぱりここはいつ食べても美味しいね」
「初めて来ましたけど、本当に美味しかったです!」
そんな話をしながら帰ろうとしていた僕達の前に知らない人が現れた。
「ねぇねぇお姉さん達、もしヒマなら俺らと遊ばない?」
「そうそう、俺達結構遊ぶと楽しいって評判なんだぜ?」
「いやそう言うのは良いです⋯⋯」
「わたしも遠慮しておきます」
「僕もそう言うのは⋯⋯」
僕達の前に現れたのはまさかのナンパだったと言うか、ナンパって実在してたんだね⋯⋯都市伝説かと思ってたよ僕。
「まぁまぁ、そう言わないでさ」
「俺達と楽しいコト、しようぜ」
「いや、何をするつもりなんですか」
先輩が恐る恐るナンパ男達に聞いてみると
「「ボウリングに決まってるじゃん」」
「「「いや本当に楽しい事!?」」」
こう言う時に誘うのっていかがわしい所だったり、そう言う事が出来る場所ってイメージが強いから、本当にただ遊ぶ場所を言われた僕達は変な声を出してしまった。
てっきり密室になりやすいカラオケとかだと僕は思ってたよ。
「いや本当はね、ほかに三人友人が来るはずだったんだよ、でもドタキャン食らっちゃってさ、予約してるし勿体ないなって」
「そうそう、そんで俺らが自分で言うのも何だけど、ナンパしてみるかってノリになってさ」
「あの、ナンパは良いんですけど、僕⋯⋯男ですよ?」
こう言えば流石に引いてくれるだろうと思い、恥ずかしいのを我慢しながら僕はそう言った。
「「えっ?君が?男?」」
「はい、学生証で良ければ⋯⋯」
証拠として僕は、自分の学生証をお財布から取り出して、性別の部分を見せる。
「えっ」
「??」
「え、えっと、お姉さん達、友達というか、カレシにこう言う格好させる趣味?」
「いや、流石に無いよね。
君の趣味なんだよね?」
「僕の趣味では無いですよ流石に⋯⋯」
「「って事は⋯⋯」」
「そ、そうです!わ、わたし達の趣味です」
「うんうん、私達と遊びたいって事は、そう言う格好、したいのかな?」
薫さんはわざとらしく笑みを浮かべながらそう言った。
完全に悪ノリしてるような⋯⋯?
「い、いや⋯⋯」
「それはちょっと⋯⋯」
ナンパ男達は笑顔を引き攣らせながら、後退りをしている。
おそらく自分自身がどんな格好をさせられるか想像してしまったのかな?
「ちょ、ちょっと予定を思い出したと言うか⋯⋯」
「うん!そう!予定!あったんだわ!」
「「って事で⋯⋯さよならお姉さん達!」」
そう言いながらダッシュで逃げていったナンパ男達。
「えっと、何だったんですかね⋯⋯?」
僕は呆然と逃げていくナンパ男達の背中を見つめながらそう言った。
「いやぁ、優希くんのおかげで助かったよ」
「あそこで男だって言ってくれたおかげで、私達の趣味みたいに錯覚してくれたのは助かったね⋯⋯」
「ですね、と言うかやっぱり優希くんが女装してると⋯⋯違和感無いんですね」
「鳩が豆鉄砲を喰らったような顔してたから途中笑いそうになっちゃったよ私」
「ゆるママさんそれ分かります!」
「あ、あはは⋯⋯」
僕としてはもう笑うしか出来なかったけど、それは仕方ないよね。
ただ、ナンパお兄さん達変な恐怖感じさせてごめんなさい⋯⋯
あれ?でもよく考えたらナンパする方がだめなのかな?
「優希くんの可愛さに気付いて声掛けたのはお目が高いとは思うけどね」
「同感です」
「いや、多分薫さん達目当てで声掛けたと思うんですけど⋯⋯」
「「えっ?」」
「いや、その二人とも⋯⋯美人なので⋯⋯」
「そっ、そっか⋯⋯」
「あっ、ありがと⋯⋯優希くん」
自分で言っておいて何だけど、人の容姿を褒めるのってなんだか気恥ずかしい。
でも実際二人ともすれ違ったらチラ見するくらい綺麗だからそんな事言っちゃうのも仕方ない事だと思う。
「でっでもっ!優希くんも可愛いからね!
そこは自信持ってもいいと思うかな!?」
「いやそれ自信持つようなことじゃ無いですからね!?」
そんな感じで三人の良いところを投げ合うと、再び駅まで歩き始め、駅ではそれぞれ帰る電車に乗って帰って行った。
♢
「⋯⋯あれ?」
家に着いた瞬間に僕は思い出した。
「服、着て来たままだった⋯⋯」
一応最初に着てた服は持って帰って来てるから問題は無いと言えば無いんだけど⋯⋯
「一応橋本さんに連絡しておかなきゃ⋯⋯」
メールで服を着て来たままだと言う事を説明すると直ぐに返事が来た。
「私服として使っていい⋯⋯?
女性ものの服なのに⋯⋯?」
僕はこの後、洗濯するとクローゼットの中にそっとこの服を仕舞い込んだ。
「それにしても、最近女装に抵抗感が無くなって来てる気がする⋯⋯」
僕、大丈夫かな?
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