136:冬コミ二日目!(前編)

 昨日はドタバタと頒布に追われていた僕達も今日は自由な日。

 そう、コミケでコスプレをする日!

 今日の予定はコミケのコスプレ広場でふわちゃんの衣装の色違いを着る予定⋯⋯だったんだけど。


「優希くん、本当にごめんね!」

 薫さんがコスプレ広場でコスプレの撮影をしている時にそれは起きたんだけど、薫さんのイラスト描きの友人が今日頒布の日だったらしく、お手伝いをしてくれる人が昨日の花園さんのように急に来れなくなってしまったのだとか。

それで今日現地にいる事を知っていた薫さんに電話が来た、と言う事みたい。


「僕の事は気にしないで大丈夫ですよ!

 それに知り合いの人もお手伝いの人が来れなくなるって昨日に続いて何か呪われているんですかね⋯⋯?」

 そうそう身近にこんなことが起きるなんて珍しい気がするんだけど⋯⋯


「そうだよね、私もそう思うよ⋯⋯

 と言うことで優希くん、由良も連れて行く事になっちゃうんだけど、一人でも大丈夫?何かあったら直ぐに連絡してね?」

「こ、これでももう少しで18なんですよ?」

 僕はじとーっと薫さんを見ると薫さんは慌てた様子で答えた。


「だ、だって優希くんって可愛いから悪いお姉さんとかに連れて行かれそうで⋯⋯」

「悪いお姉さんって何ですか!?」

 僕は思わずツッコんでしまったけど、大丈夫。

 もうすぐで僕も高校三年生なんだし、心配するような事じゃないよね。


「そ、それは⋯⋯うん、華さんを悪くしたような人、かな、うん」

「それって褒めてるのか貶してるのかどっちなんですか!?」

「ほ、褒めてる⋯⋯かな?」

 答え辛そうに言う薫さん。


「ま、まぁ優希くんが大丈夫なら良かった!多分ホテルに直接帰る事になると思うから優希くんも気を付けて帰ってね!」

「優希くんまた後でねー!」

 そう言うと薫さん達は同人ブースのある方向へ歩いて行った。


「二人とも頑張ってください!」

 二人を見ながらそう言うと、ありがとー!と由良さんの元気な声が聞こえてきた。

 薫さんの声も聞こえた気がしたけど、由良さんの声にかき消されちゃったかな?


「さて、どうしようかな⋯⋯?」

 今はコスプレをしてるけど、薫さん達の前だからやってるだけでずっとこのままの格好でいたいわけじゃないし、着替えて来ようかな?


 僕はピヨッターで薫さんと別行動する事になったので今日はここまでにする事を呟いてから更衣室へ向かった。



 そして更衣室に到着した僕は衣装から私服に着替えて、会場内を歩いていた。


 今日はどうやら女性向けのジャンルが多めの日だったみたいだったので企業ブースでも見に行こうかなと思い、案内板を見ながら企業ブースを目指して歩いていた。


 すると、どこかで見たことのある人がチラっと僕の視界に入ってきた。


「あれ?華さん?」

 僕はその人をじーっと見つめていると華さんらしき人と目が合った。


「もしかして、優希くん?」

「あっ、やっぱり華さんだったんですね!」

 とてつもない偶然で会場内でバッタリと出会った僕達。


「あれ、そう言えば優希くんは今日はコスプレは⋯⋯?」

「薫さんに急用が出来ちゃったので今は一人行動なんですよ。さっきまでコスプレはしてたんですけどね」

 僕がそう言うと華さんはガッカリした様子で項垂れた。


「あぁ、間に合わなかった⋯⋯」

「そ、そこまで見たかったんですか?」

 僕がそう聞くと華さんはうんうんと物凄い勢いで首を縦に振った。


「いつも配信に来てくれてますし、スパチャも一杯貰ってるから⋯⋯」

 偶には、いいかな?


「えっ?」

「後で、いいなら⋯⋯着ますよ?」

 ぱぁっといい笑顔になった華さん。


「ほ、ほんと!?」

「そ、その代わり華さんの事もあるんでカラオケとかみたいな場所にして下さい⋯⋯恥ずかしいですし」

 僕がもじもじしながらそう言うと華さんが頭を抱えた。

 どうしたんだろう?


「っ⋯⋯わ、私は大丈夫。カラオケでも何でも大丈夫だよ」

「ほ、本当に大丈夫ですか?」

 ふるふると体を震わせながら言う華さんだけど、本当に大丈夫なのかな、体調あまり良く無いのかな?


「それで、華さんはどうしてここに?」

「えっと、綾乃ちゃんに会ってこれを受け取ってたんだよね」

 そう言って両手に持っている紙袋をぶらぶらとさせながら言った。


「それは?」

「昨日綾乃ちゃんが一緒に買ってきてくれた本だね。色々頼んでたんだよ」

「どんな本なんですか?」

 僕がそう聞くと華さんは冷や汗を流しながら目を泳がせた。


「う、うん、最近話題のVtuberの本とかだね。うん」

「えっ!Vtuberの本ですか!?」

 僕はちょっと気になってどんな本があるのか聞いてみる事にした。


「あの、ちなみに誰の本とかなんですかね?」

「えぇと⋯⋯その、浮雲、ふわり⋯⋯とか。」

 流石に人目のある場所で私って言う訳にはいかないもんね。それにしても自分の本が気になっちゃうの、なんかわかるかも。

 僕も結局昨日の花園さんの本読んでないからね。それに、成人向けだったし。


「僕も分かりますよ!気になりますよね!」

「え、えぇ!?き、気になっちゃうの?」

 驚いた顔で華さんは僕に聞き返す。


「だって、そのどうやって描かれてるか気になりませんか?」

「えっ!?(薄い本に)どんな風に描かれてるか気になっちゃうの!?」

「どんな風に僕のこと見てるかとか気になりません?」

 僕は小声で周りに聞こえないように華さんに言った。


「ゆ、優希くん、結構大胆だったんだね⋯⋯」

 あれ?何か勘違いされてる?


「ん?何か勘違いしてません?」

「えっ?」

「自分がどう言う目線で見られてるのかって意味ですよ?それにどうやって白姫ゆかっていうキャラを描くのか凄く気になるんですよね」

「⋯⋯あっ、うん、そうだよね。」


「それで、どんな本なんですか?」

「ゆ、優希くんにはまだ、早いかな⋯⋯」

 昨日もそうだけど何で!?


「な、何でですか!?」

「そ、その、それはうん。

 さ、察してくれると⋯⋯」

 あ、もしかして、そう言うこと......?


「は、はい⋯⋯」

 意味に気付いた僕は恥ずかしくなり、顔が熱くなってきた。


「そ、それじゃ優希くん、ここだとあれだし、そろそろ移動しよっか?」

「確かにそうですね、そうしますか?」

「うん!それじゃ優希くんの可愛い衣装見る為にカラオケいこ!」

「は、ははは、お手柔らかに⋯⋯」

 テンションの上がった華さんに連れられて僕はカラオケに向かって歩いていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る