52:爆弾投下

「お父さんが、閃光のシュバルツだったの⋯⋯?」

 僕はお父さんに対してそう言った。


「いや、あの、これは」

 お父さんは配信画面の配信停止をクリックしてそう言った。

 今僕達二人は知らないが画面ではコメントが大量に流れている。


「ねぇ、お父さんってよく出張行ってたよね。

 それって配信やイベントの為?」


「いや、うん、そうだな」

 一周回って冷静になり始めたのかお父さんから焦りが消えてきた。


「と、いうことは、前東京であったあのイベントで話してたのも、お父さんだよね?」

「そう、だな⋯⋯」


「僕がVtuberやってるって事も、知ってたんだね」

「まさか、あの時言われなかったら気付けなかったぞ、流石のお父さんでもな」


「お父さんが何の仕事してるか聞いたらいつもはぐらかしていたのもこのせいだったの?

 大体いつもインターネット関係の仕事としか教えてくれなかったよね?」

「いや違うんだ、俺も最初はこんなはずじゃなかったんだぞ!」


「お父さん、Vtuber暦何年だっけ?」

「約十年、だな」


「そりゃそうだよね、Vライブなんて今じゃ大手の事務所の一期生だもんね」

 僕はすーっと息を吸って言った。


「お父さん凄いよ!!!!」

「へっ?」


「僕はお父さんの作ってた動画よく見てたよ!そのお陰でちょっとした雑学だったり、ライフハックだったりを知る事が出来たし、尊敬もしてた。

 そんな人がお父さんだったなんて誇らしいよ!」

「軽蔑しないのか?ずっと、俺は黙ってたんだぞ?」


「しないよ!僕だって僕が白姫ゆかである事人に言ってないんだから!クラスメイトの一部だけだよ、知ってるの!」

「そう、か」

「それにしても、凄い偶然もあるんだね」

「本当心臓に悪いぞ⋯⋯というか帰って来るの明日じゃなかったのか?」


「僕は月曜日って言ってたけど、お母さんのいつもの曜日感覚のズレが⋯⋯」

「あぁ、完全に失念してた。なんだったら帰ってくるの明日だと思って部屋入ってこない様に言うの忘れてたしな」


「まさか僕も配信してるなんて思わなかったし、それにしてもお父さんの部屋こんなに機材沢山あったんだ」

「おぉ!分かるか!⋯⋯あれ?」

 そう言いながらモニターをチラッと見たお父さんが顔を青くしながらこちらを振り返ってくる。


「どうかした?お父さん?」

「あー、あのー言いにくいんですけどね、ゆかさん?」


「いきなりどうしたの?僕はゆ、あぁ!?」

「そのー配信、切れてなかったみたいで」

「何やってんのお父さん!!!!!!!」

「申し訳ない!」


「あぁ⋯⋯僕はいいけど、お父さんが⋯⋯」

「いや、まぁ、大丈夫だと、思う」


「軽すぎない?本当に大丈夫?」

 そうすると、お父さんのスマホに電話がかかってきた。


「やばい!と、とりあえず、皆さん、一度配信落としますので!また後でピヨッターで詳細を出しますからお待ちください!」


 そう言ってお父さんは配信を切り、電話に出た。


「はい、姫村です」

『はい、じゃないですよ!今大変な事になってるんですからね!!!!!』

「やっぱり?」

『何一周回って冷静になってるんですか!』

「いやー人って焦りを過ぎると逆に冷静になるんだなぁって」

『とりあえず言っておきますね、炎上はしてません、ですが問い合わせが尋常じゃないです』


「むしろなんで燃えないのか」

『私に言われても知りませんよ。

ただ配信の切り忘れに気付いてもらう為に電話しただけですので、落ち着いたら再開してもらえれば』


「あぁ、ありがとう」

『むしろ今までが完璧すぎたので皆こう言ってましたよ、シュバルツも人間だったんだなって』

「俺何だと思われてんのリスナーに」

『AI?ですかね?』

「まぁいいや、とりあえず落ち着いたらまた連絡しますわ⋯⋯」

『了解です。息子さんにいつも応援してますって言っておいて下さい』

「実はそれ言いたかっただけじゃないのか!?⋯⋯切れてる」

「話は終わったみたいだね?」

「あ、優希さん⋯⋯?」

「積もる話もあるよね、ゆっくり聴かせてもらおうかな?」

「Oh...」


♢(閃光のシュバルツのリスナー視点)


「シュバルツさんの息子さんのお話、私気になります!」


『私の息子について、ですか』


:謎に包まれてる息子くんについに触れたか

:かっこいいの?可愛いの?

:普通っていう可能性もあるだろ

:シュバルツさん超イケボだからきっとカッコいいはず!


『よく出来た息子ですよ、料理も掃除も出来ますし、見た目もいい、性格は⋯⋯ちょっと純粋すぎるかな、と思う事もありますが』


:息子さんをお嫁さんに下さいお義父さん

:純粋ショタ...ぐへへ...

:変態ってどこにでも現れるんですね

:今時料理も掃除も出来る子って凄いな羨ましい、うちの子は部活ばかりでなぁ

:学校は学校で大変だからのう

:今何歳なんですか?


『私の息子ですか?十七歳ですね』


:食べ頃...

:一番いい時期じゃないの...

:お前ら怖いよ!?

:でも、息子さんについて話すときのシュバルツさん、いつも以上に優しい声してますよ

:大事に思ってる証拠ですな

:ほんわかしてていいですね


 そんなほんわかとした雰囲気になっていると突然爆弾が投下された。


『お父さん、ただいまー!』

『えっ?』


:この声はまさか!

:息子きゅんきたあああああああ

:声可愛すぎて草

:あの、息子さんをお婿にください


『ゔぇぇぇぇぇああああ!!!?????』


:悲鳴!?

:シュバルツさんが!?

:な、初めてじゃないか?????

:悲鳴助かる

:悲鳴って、いいね


『お父さんが、閃光のシュバルツだったの⋯⋯?』


:バレて草

:父親がVやってるってどんな心境なんだろう

:しかもアバターはイケメンだしな、実際今40歳くらいでしょシュバルツさんって

:おっさんがイケメンの皮被って配信とか心にダメージ凄そう


『いや、あの、これは』


:シュバルツさん焦ってるwww

:そりゃこうなるわ

:誰だって焦るってこんなん

:シュバルツさん、配信止まってないの気付いてない?

:これは、伝説ですねぇ

:伝説って?

:あぁ!伝説の配信さ!


『ねぇ、お父さんってよく出張行ってたよね。

 それって配信やイベントの為?』


:出張って事にしてたのか

:まぁそうとしか言えないわな

:これはしゃーない


『いや、うん、そうだな⋯⋯』


:あれ?話し方変わった?

:声も少し幼くなったような

:むしろこの声好きなんだけど


『と、いうことは、前東京であったあのイベントで話してたのも、お父さんだよね?』


:あれ、あのアキバのイベントに息子くん来てたのか

:あらやだ凄い偶然

:楽しくなってきました


『そう、だな⋯⋯』


:潔く認めたな

:言い逃れ出来ないわな


『僕がVtuberやってるって事も、知ってたんだね』


:?????????

:流れ変わったな

:どういう事だってばよ...


『まさか、あの時言われなかったら気付けなかったぞ、流石のお父さんでもな』


:なんだ、この違和感

:口調が違いすぎるwww

:でもなんだろう、ちょっとヤンチャなショタボって感じで...しゅき...

:わかるわ

:わかりみが深いわぁ!


『お父さんが何の仕事してるか聞いたらいつもはぐらかしていたのもこのせいだったの?

 大体いつもインターネット関係の仕事としか教えてくれなかったよね?』


:これはいけない

:怪しまれる言い方やんけ!!!

:むしろよく息子くんは今まで突っ込まなかったなと


『いや違うんだ、俺も最初はこんなはずじゃなかったんだぞ!』


:どういうこと?

:よく分からん、でも最初は本意じゃなかったって事?

:隠すつもりなかったけどって事ちゃう?

:それはあり得るな


『お父さん、Vtuber暦何年だっけ?』

『約十年、だな』


:長いよな、Vの歴史ってもう10年超えなんだな

:もうそんなに経つのか

:私、もう30なんだ...現実辛いよぉ...

:よう俺

:やあ私


『そりゃそうだよね、Vライブなんて今じゃ大手の事務所の一期生だもんね』


:Vライブもデカくなったよなぁ

:昔はすぐ潰れそうとか言われてたもんな


『お父さん凄いよ!!!!』

『へっ?』

『僕はお父さんの作ってた動画よく見てたよ!

 そのお陰でちょっとした雑学だったり、ライフハックだったりを知る事が出来たし、尊敬もしてた。

 そんな人がお父さんだったなんて誇らしいよ!』


:ベタ褒めで草

:いい息子じゃないか

:というか自分の息子に自分の動画見られてたとかかなり恥ずかしいよな

:悶絶するわこんなん


『軽蔑しないのか?ずっと、俺は黙ってたんだぞ?』

『しないよ!僕だって僕が白姫ゆかである事人に言ってないんだから!クラスメイトの一部だけだよ、知ってるの!』


:???????????

:は??????????

:えっ?????????

:白姫ゆかちゃん!?!?!?

:どういう事!?!?!?

:ファーwwwwwwwwww

:爆弾発言キター!!!!!


『それにしても、凄い偶然もあるんだね。』

『本当心臓に悪いぞ⋯⋯というか帰って来るの明日じゃなかったのか?』


:だから配信を急遽今日にしたのか

:なるほど、納得

:そりゃ息子帰ってくるならそうするわな

:ゆかちゃん...?これって現実...?

:現実だぞ


『僕は月曜日って言ってたけど、お母さんのいつもの曜日感覚のズレが⋯⋯』

『あぁ、完全に失念してた。なんだったら帰ってくるの明日だと思って部屋入ってこない様に母さんに言うの忘れてたしな』


:そら明日帰ってくるって言われてたらそうなるわ

:これは仕方ない

:不幸な、事故だよ

:嫌な、事件だったね


『まさか僕も配信してるなんて思わなかったし、それにしてもお父さんの部屋こんなに機材沢山あったんだ』

『おぉ!分かるか!⋯⋯あれ?』


:おっと?

:気付いたか?

:いえーい!白姫シュバルツさん見てるー?


『どうかした?お父さん?』

『あー、あのー言いにくいんですけどね、ゆかさん?』


:ゆかさんは草

:息子くんの名前はゆかだったのか?

:流石に気付いたんでしょ


『いきなりどうしたの?僕はゆ、あぁ!?』

『そのー配信、切れてなかったみたいで』


:気付いたあああああああああ

:いやあああああああああああ

:配信終わっちゃうううううう

:いかないで

:止めないで


『何やってんのお父さん!!!!!!!』

『申し訳ない!』


:お義父さん!!!!

:お義父さーん!!!!

:ゆかちゃんをお嫁さんにください...


『あぁ⋯⋯僕はいいけど、お父さんが⋯⋯』

『いや、まぁ、大丈夫だと、思う』


:楽観的ィ!!!!

:草

:もうどうにでもなーれ状態で草


『軽すぎない?本当に大丈夫?』


:ん?スマホの音だ

:これは運営さんサイドが気付きましたね

:完全に配信終了の流れだこれ

:まぁ時間も丁度よかったしこれで終わりかね


『やばい!と、とりあえず、皆さん、一度配信落としますので!また後でピヨッターで詳細を出しますからお待ちください!』


:お疲れ様ー

:修羅場頑張って

:ゆかちゃん....

:存在していたのか...


------この配信は終了しました------

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