2:自己紹介動画を撮ろう!
「うーん、どうしたものかな⋯⋯」
僕は今とても悩んでいた。
そう、自己紹介動画の撮影を行わないといけないからだね。
本来なら男性アバターで考えていたのでその時の原稿なんかは全て書き直し。
考えていた名前も完全に没行きに。
まぁこの3Dモデルどちゃくそ可愛いから良いんだけど、この娘をもっと広めたい。
僕のモデルだけじゃなく、ゆる先生の絵をもっと広めていきたい⋯⋯まぁ広めるのはピヨッターでやっていたけど知名度の無いただのモブアカウントだったからね。
でも今はそんな事よりも大事な事がある⋯⋯それは——
「やっぱり性別の問題⋯⋯だよね。
声、作ってみるかな?」
僕は一人部屋の中で呟きながらそう考えていた。
「うーん、本人には分かり辛い問題だし、動画を誰かに見てもらって声の問題は解決しようかな?」
この辺りは友人にこっそり見せたりするのがベターな気がする。
「次に名前だけど、これも考え直さないとだね。白い髪の毛だから安直だけど白は入れたいし、僕の名字にもある姫をいれたらそれっぽい名前になりそうな気もするなぁ」
そして長い事考えた末に出た名前の案がこれだった。
キャラデザをした先生がゆるという名前なので、それに似せる事で先生のキャラだと思ってもらいやすいような響きの名前にしたよ。
白は髪色を意識して入れて、姫と言う言葉にピンクのイメージを持っている僕は、これを入れる事で完全に髪色をモチーフにした名前になった気がする。
他の人がどう思うか僕には分からないけどね。
そうなると次にキャラの方向性、キャラ付けっていうやつだね。
この娘の見た目だとどちらかと言えば妹キャラの方が合っている気がするから、視聴者の事はお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼ぶ方がしっくりと来そう。
次に喋り方なんかはクラスにいる友人に動画を見てもらって判断してもらう事にしようかな。 友人もVtuber沼にハマってるからきっといい意見をくれると思うし。
そうして原稿の内容を改変し、僕は動画を撮るために今モーショントラッキングをする装置を身に付けた。
正直この装置を着けて動くと暑いのでクーラーを入れておく。
季節も七月になったばかりとは言え長袖を着てると流石に暑いしね。
そして僕は意を決して録画開始ボタンを押し、録画を開始した。
♢
次の日になり休みも終わってしまい学校へと向かう。
いつものように教室へと入り、まだHR《ホームルーム》の前なので席に座っている友人に動画を見せに行く事にした。
「おはよう裕翔、見てもらいたいVtuberの動画あるんだけど見てくれない?」
彼の名前は
僕が小学生の頃から一緒にいる俗に言う腐れ縁ってやつ。でも僕が困ってる時に助けてくれたりととても頼りになる友人なんだ。
「おぉ優希か、おはよう、それで動画って?」
「これなんだけどさ、どう思うか教えてくれないかな?」
「オッケーオッケー、任せてくれたまえ」
そうして僕の撮影した動画を裕翔に見せると、画面では僕が中に入ったバーチャル美少女が動きながら喋っている。
『この動画を見てくれているお兄ちゃん、お姉ちゃん初めまして!ボクは白姫ゆか、今日からVtuberとして活動していくことにしました!』
「なぁ優希、何この娘めっちゃ可愛くね?」
「だ、だよね」
動画を見ながら裕翔は僕にそう語りかけ、僕も同意するしか無いくらいこの娘は可愛い。
中身が僕じゃなければ素直に可愛いと言えたかもしれないけど今は何とも言えない複雑な心境だったりするね。
『そしてこの動画はタイトルの通り、ボクの自己紹介動画になっています!良ければ最後まで見ていってね!お兄ちゃん♪』
「ぐはっ」
裕翔がいきなり胸を抑えて苦しみ始めた。
「えっ裕翔どうしたの!?大丈夫!?」
「このお兄ちゃんはダメだ、胸がきゅんとなる、死ぬ」
そ、そこまで?
「え、えぇ・・・?」
「とりあえず冒頭だけの感想だけ言うぞ、この娘は流行る、この声にキャラデザ間違いなく強い」
声については流石に素のままだと男バレしそうだからちょっと作ってはいるのは確かだけど、そこまでなのかな?本人からするとよく分からないなぁ。
『まずボクの名前は最初にも言ったと思うけど白姫ゆか、17歳!本当だからね!』
『次にボクの趣味はゲームや歌う事、流石に版権の問題があると思うから歌ってみたはボカロ曲で許可が取れたものや民謡なんかになっちゃうと思うけど許してね!』
『それと配信は基本的に週末にやる予定だから皆良かったら遊びに来てくれると嬉しいなー、なんて。』
『初配信は来週の七月十一日の夕方の十八時から始めるからよろしくね♪』
『次に動画の投稿についてなんだけど、基本的に週に3本を予定しているよ!動画は配信と違ってボクが話題の物を食べた反応だったり、動画にしやすいゲームをプレイしたり、そんなちょっとした事をしていく予定なのでよかったら皆見ていってね!』
裕翔は自己紹介が始まってからはずっと口を閉ざしていた。
「どうだった?何か違和感とか感じた?」
「俺、推すわ」
「へっ?」
「ヤバイ、俺Vtuberにガチ恋したかもしれん」
やばい、このままだと裕翔が叶わぬ恋に落ちちゃう!
「あのさ、裕翔?」
「「「何この娘!!!ちょーカワイイんだけど!!!」」」
「えっ?あれ?」
僕のスマホがクラスの女子達の注目を集めている。
流れているのはさっきの動画、あっこれだめなやつだ。
「「「白姫ゆか、検索しよ」」」
待って!!!!まだチャンネル無いの!!!
バレる!!!!神様助けて!!!!!!
「俺も検索しよう」
裕翔まで検索を始めた。
でも出る訳がない。
だってまだ未発表なんだもの。
「「「「あれ?存在しない?」」」」
「なぁ、優希」
「「「ねぇ、姫くん?」」」
「ひゃ、ひゃい!?」
「「「「この娘の動画、どうやって手に入れたのか教えてもらおうか?」」」」
あぁ、もうだめみたいです。
都合良くHRを告げるチャイムなんてなる訳が無く。
「⋯⋯くだよ」
「「「「ん?なんて?」」」」
「このVtuberは僕だよ!!!!!」
「「「「えっ?」」」」
「まだチャンネルも作ってないのはこれで裕翔の反応良ければこの動画でデビュー飾ろうと思ってたの!」
「(あ、危ねええええええええええ!!!???
「いや個人だよ?」
「マジで?どうやってあんな破壊力抜群のモデル手に入れたんだよ」
「五十万円出したからね⋯⋯」
遠い目をしながら僕は答える。
「五十万出してまでやるとか姫くんちょーやる気じゃん⋯⋯私応援してるよ!」
「うちもうちも!姫くんがんば!」
「ロリ声出せるショタ⋯⋯うぇへへ。」
同じクラスの香月さんと天音さんと花園さんの三人が応援の言葉をくれた。
あれ?花園さん何か変な事言ってなかった?
「なんか誰か変な事言ってなかった?」
「き、気のせいだと思うよ?」
「スパチャさせて!私が姫くんを養うんだ!」
香月さんも僕と同じ事を思ったみたいだけど花園さんは否定してるし、気のせいかな?
それと天音さん、何とんでもない事を言ってるのかな!?
「優希、お前凄いな⋯⋯俺に出来ることあったらさ、手伝うから何かあったら言ってくれよ?」
裕翔もそう言ってくれて、かなり心強い。
「「「私たちも何かあったら協力するよ!!」」」
裕翔に動画を見せた結果、クラスの女子と裕翔が早速ファンになったようだった。
あれ?喋り方とかの問題解決してなくない? まぁ、あれでよかったのかな?
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