空飛ぶストレート

 俺はいつだって真っ直ぐに飛び続けていた。


 まわりに何が飛んでようが、あるいは地べたを這っていようが俺には関係ない。ただ飛び続けるだけだ。


 しかし、ある日のこと俺は自分を曲げちまうことになる。


 HELP!


 その救助信号を受信した俺はなぜか柄にもなく向っちまったんだ。別に助ける気があったわけじゃないのにな。


 近づくとそいつはひどい事故にあっていて、放っておけば命はない状況だった。


 放っておいてもよかったんだが、どうしてか俺は助けに向っちまった。その時のやつの表情は忘れようがねぇ。


「こないで!私を助けたらあなたはただじゃ済まないわ!」


 やつはそう叫んだな。


「別にいいさ、こういう生き方にも飽きてきたところさ」


 俺はそんな心にも思ってない無いことを言っちまった。


「あなた、ロックなのね……」

「それはこれからさ」


 そんなわけで俺たちはオンザロックのウィスキーになったわけさ。


 酒のつまみには悪い話でもなかったろ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る